こまつ座旗揚げの代表作にして、井上ひさし作品の金字塔・舞台『頭痛肩こり樋口一葉』。樋口一葉の生誕150周年にあたる今年、一葉を世に広めることに尽力した妹・邦子役を演じる瀬戸さおり。女優として、映画やドラマ、舞台にとあらゆるシーンでその高い演技力が評価されている彼女に、井上作品の舞台に立つ心境、演出家・栗山民也と向かい合う姿、そして読書家としての一面について話を伺いました。気さくでポジティブな彼女の素顔が魅力的です!
※「樋」のしんにょうは点が2つが正式名

Photo:望月宏樹
Text:kukka編集部

稽古現場の雰囲気を教えてください。

まだ稽古が始まったばかりで、歌の練習で数回、皆さんにお会いしたくらいです。ご一緒したことがあるのは増子さんだけなのですが、現場は女性ばかり6人がずっとお喋りしながら楽しく稽古させて頂いています(笑)。

演出の栗山さんからは何か要望などはありましたか。

栗山さんとはこれまでに3回、舞台をご一緒させて頂いていて、今回で4回目の舞台になります。とても稽古が早いんです。なぜここでそう動くのかを自分で考えさせて、そしてまた次の動きへと進んでいきます。それをどんどんやっていくと、栗山さんの付けた動きの中で、すごく自分の感情が動きやすくなっていることに気づくんです。栗山さんにはすごく難しいことを言われるんですけど、明確なビジョンがあるので、そこに自分がどうやったら辿り着けるかを常に考えています。きっとそこにたどり着いたら美しいんだろうなとか、すごく楽しいんだろうなとか、そういうことが栗山さんの演出から私たちに伝わって来るんです。ダメ出しも、クリアすると、もっと上のこと、もっと上のこと、と次々に期待してくださるので、栗山さんの稽古場は毎回楽しいですね。あと、以前にご一緒した舞台『きらめく星座』では、音楽があって、その音楽で現場の雰囲気が変わっていくんです。つらい場面の後でも、歌が流れてくると、自然に体が動いて歌っていました。今作でも歌のシーンがたくさんあるので、すごく楽しみにしています。

今回の舞台でも、たくさん歌を聴けるんですね。

そうなんです。素敵な歌ばかりで、自分が歌の練習をしていても、他の方が歌っているのを聴いていても心地良いですね。井上ひさしさんの作品は本当に歌が楽しみです。やっぱり気持ちから変わってきます。日常に音楽があることを改めてすごく大切に思える作品ですし、これから歌の振り付け練習が始まるので、今から楽しみです。

舞台の時間もかなりありますよね。

はい。でもその間、歌って、踊って、芝居して、と結構動き回ります。感情的にもジェットコースターに似たところがあるので、あっという間に終わってしまうと思います(笑)。

本作は明治時代の歌人・小説家である樋口一葉やその家族の話ですが、どのような方との印象でしょうか。

樋口一葉さんのお父さんとお兄さんが亡くなってしまったあと、女3人でどうやって生きていくかを描いた作品です。本当に生活が厳しい中で、邦子は針仕事をしていきます。一葉が書けない時も、ずっと姉を尊敬し、支え続けていく。ギリギリの中でもパワフルに明るく生きていった女性たちだったと思います。登場する全員が、タイトルにもあるような頭痛で頭を抱えてしまうほどの悩みを抱えながら生きている。その苦しい中でも地に足をつけて、どう踏ん張っていくか、その姿が描かれていると思います。

瀬戸さんが演じる「邦子」の姉への尊敬や謙信さがあったからこそ、一葉の亡くなったあと、その功績が広められたところがありますよね。

姉の一葉には、「亡くなったらすべての作品を捨てて欲しい」と言われていたそうですが、それらを大切にとっておき、一葉もその作品も世に広めていったのは、邦子がいたからこそと書かれたものもあるようです。姉の書いた作品をどうにか残したいという思いがあったそうです。最後まで生き残ることになった邦子は、きっと「生きる」ことに関してはある意味、誰よりも強く思っていたのかもしれませんね。

瀬戸さんご自身もご兄妹がいらっしゃるかと思います。一葉、邦子と重なる思いはありますか。

兄の背中を見ながら、という意味では共感できる部分もあるかもしれません。兄が高校2年生の時には、私たちと離れて東京に出て現在のお仕事をしていました。父も単身赴任で家を空けていたので、母と妹の女3人で暮らしていた時期もありました。やっぱり女だけになると、私がしっかりしなきゃ、家族を支えないと、との思いは、当時かなりありましたね。兄の夢も応援したいし、母を助けたいと思っていたので、その気持ちは重なりますね。

兄の康史さんとは普段、お芝居の話はされるのでしょうか。

あまりしないですね(笑)。兄の作品を観て、感想を言うことはありますが、兄からはあまり……。でも、お仕事関係の方から、私の仕事ぶりを聞くと兄は嬉しそうにしていると聞いています(笑)。

東京での公演後も、大阪や岡山でも公演が続きますね。

各地へ行けるのも楽しみですし、こまつ座さん公演は全国にファンの方が多いので、とても楽しみにしています。今作もずっと愛され続けている作品ですし、お客さんの反応を肌で感じられるのをとても楽しみにしています。

今回の作品で、ご自身の成長、成果を楽しみにしている点はありますか。

栗山さんがいつも仰っているのは「自分が知らない、新しい声を探しなさい」ということです。思いがけない声がどんどん出ていいし、一回一回、ゼロから作っていくので、自分が知らない声に出会えたらいいね、といつも言ってくれます。あまりこうしようと決め過ぎず、思わず出た声を楽しみにしたいと思っています。自分では思いがけない声でも、栗山さんは喜んでくださるので、そういう自分が知らなかった「新しい声」に出合えるのは面白いですね。

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現在、放送中のドラマ『理想ノカレシ』についてもお話を聞かせてください。作品では、主人公・優芽子の高校時代からの親友役・江崎友実を演じられていますね。

はい、優芽子をよく知り、彼女を思いながらも、自分の意見をズバズバ言う親友役です(笑)。

ご自身とも似ている部分もあると以前にコメントで出されていましたが。

私自身も友人などから相談されることが多くて、相手が何を求めているのかを踏まえつつ、自分の考えをはっきり伝え、でも最後にはしっかり応援していることも伝えるようにしています(笑)。

確かに瀬戸さんのアドバイスは的確に言ってもらえそうですね(笑)。

この作品で面白かったのが、「恋」と「株」はすごく似ているってことです。「株」のできる女は「恋」もできる、と台本に書かれてあって、「なるほどな」と感心してしまいました。「恋」も「株」もきっぱり決断することが大切なのかもしれないですね。

確かにそうですね。洋服の断捨離をできる人は、「株」も「恋」も強そうですね。

私、ちょうどこの間、洋服を処分しました(笑)。ドラマでもそういった「恋」と「株」の話が出てくるので、そういったところも面白いなと思って演じました。

ドラマも終盤に差しかかってきますが、これからの見どころを教えてください。

なかなか恋を進められない優芽子が迷いながらも、最後は自分の気持ちに素直になるようにアドバイスをしていきます。その結果、魅力的な男性がたくさん出てくる中で、優芽子が素直になった時に果たして誰を選ぶのかを楽しみにして欲しいですね。自分の気持ちを素直に聞いてみてと言うのは、私自身も感じるものがありました。周りの目を気にしてしまいがちですが、自分の気持ちに素直になることは、同時に自分を大切にしてあげることだと思うんです。そう思えて、私自身にも響くセリフでしたね。優芽子が最後に一歩踏み出せるようになるまでをドキドキしながら観てほしいと思っています。また同じように、歳を重ねてなかなか自分に素直になれない女性たちにも、素直になって恋をしましょう、というメッセージも伝わると良いですね。

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瀬戸さんのプライベートについても聞かせてください。最近、ハマっていることなど、何かありますか。

本を読むことが好きなんですが、先日、ピースの又吉直樹さんが初めて書かれた短編小説の『夕暮れひとりぼっち』を読みました。それが、すっごく面白かったんです! かなり前に書かれたもので、マジシャンを紹介する本に載せられた作品なんです。

その作品を手にしたきっかけは何かあったのでしょうか。

又吉さんのYouTubeを観ていて、そこで紹介されていたのをきっかけに知りました。書店では見つからなくて、ネットで購入しました。書かれている主人公の行動が面白くて、言葉のセンスにもすごく惹かれました。最近読んだ中では、一番衝撃的で面白かった作品です。マジシャンである老人と少年のお話なのですが、ずっと夕暮れ時の話なんです。舞台『頭痛肩こり樋口一葉』も、何年にも渡りほぼずっとお盆の場面が描かれているので、そこにも共鳴しました。又吉さんが書かれているからかもしれませんが、老人と少年による漫才っぽい掛け合いもあって、読みやすくて面白い作品だなと思いました。

>>瀬戸さおりさんがお勧めする又吉さんの短編はこちらから

それでは最後に、舞台を観に来てくださる皆さんにメッセージをお願いします。

ユーモアある井上ひさしさんの作品なので、死を身近に感じながらも、パワフルに前を向いて生きている女たちの姿に私自身、勇気づけられます。井上さんの作品は、じわーっと染み込むように訴えかけてくるものがあります。じわーっと心に染み込んでくる言葉が多いので、その「言葉のチカラ」も皆さんに感じてもらえたら嬉しいですね。


こまつ座 第143回公演

舞台『頭痛肩こり樋口一葉』

樋口一葉の生誕 150周年となる2022年、これまでも繰り返し上演されてきたこまつ座の人気作『頭痛肩 こり樋口一葉』を6年ぶりに再演。こまつ座旗揚げ公演で初演され、音楽劇としての魅力と女性6人の人生模様の切実さが観客の共感を呼んだ作品です。「にごりえ」「たけくらべ」など樋口一葉の作品が全編に散りばめられる中で展開される、樋口一葉(夏子)と 幽霊・ 花螢のユーモラスな交友、そしてたくましく生きる明治の女性たちの姿を主軸に描かれる、井上ひさし版樋口一葉像。近代化を推し進めたしわ寄せが女性にのしかかっていた明治時代に、筆の力をもって社会に 挑んだ一葉から、頑張るすべての人へのエールを込めてお届けします。

【東京公演】
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA
2022 年 8 月 5 日(金)〜28 日(日)
入場料 10,000円 U-30 7,000円 (全席指定・税込み)
前売好評発売中

<全国公演>
【大阪公演】
新歌舞伎座
2022 年 9 月 2 日(金)〜11 日(日)
【岡山公演】
津山文化センター
2022 年 9 月 13 日(火)
【東京多摩公演】
パルテノン多摩
2022 年 9 月 19 日(月・祝)
【お問合せ】
こまつ座 03-3862-5941

<出演>
樋口夏子(一葉):貫地谷しほり
樋口多喜:増子倭文江
中野八重:熊谷真実
稲葉 鑛:香寿たつき
樋口邦子:瀬戸さおり
花 螢:若村麻由美

<スタッフ>
作:井上ひさし
演出:栗山民也

こまつ座公式サイト
http://www.komatsuza.co.jp/


TBSテレビ:ドラマストリーム

『理想ノカレシ』

TBS系毎週火曜深夜24:58~(※一部地域を除く)
Paravi、U-NEXTにて毎週1週間先行配信

アラサー女性のリアルな恋愛観をオリジナル脚本で描くラブストーリー。ヘッドハンティングされたベンチャー企業で働くハイスペック女子・優芽子(大政絢)は、外では“デキる女風”だが、家では家事も髪も服も適当な“残念女子”。そんな中、初恋の人とうり二つのミステリアスな青年(佐藤大樹)と出会い…!?。理想の彼氏を育てる“王子様育成”ラブストーリー!

[出演]
小野寺優芽子:大政 絢
村瀬光琉/神宮寺望:佐藤大樹(EXILE /FANTASTICS from EXILE TRIBE)
三木 葵:堀 未央奈
小松原冬馬:小宮璃央
澤村一太:生島勇輝
大島佐弓:大谷凜香
江崎友実:瀬戸さおり
水上龍:細田善彦

[公式サイト]https://www.tbs.co.jp/risounokareshi_tbs/
[公式Twitter]@drama_streamtbs
[公式Instagram]@tbs_drama_stream
[公式TikTok]@drama_stream_tbs


【プロフィール】

瀬戸さおり・プロフィール

1989年9月19日生まれ。福岡県出身。2011年に『第43回non-noモデルオーディション』で審査員特別賞を受賞し、2014年3月まで雑誌『non-no』専属モデルする傍ら、2013年に女優デビュー。近作としては、2022年2月配信Netflix「金魚妻」、2022年5月TBSドラマ「理想ノカレシ」、舞台こまつ座「きらめく星座」、「フェードル」、「All my sons」、二兎社「鷗外の怪談」などがある。

公式インスタグラム
https://www.instagram.com/saori_seto0919/

公式ツィッター
https://twitter.com/saori_seto0919

オフィシャルサイト
https://www.watanabepro.co.jp/mypage/20000014/

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