映像制作ユニット「しどろもどリ」の福岡佐和子が監督・脚本を手がけた本作。主人公「スミコ」を務めたのは、映画主演が5年ぶりとなる女優・堀春菜。劇中の「スミコ」が現実世界に飛び出してきたかのような雰囲気を持つ彼女。「しどろもどリ」との出会いから、撮影中のエピソードまでをインタビューしています。インタビュー中、できるだけ自分の気持ちに近い言葉を常に探している堀春菜の、誠実でやさしさ漂う魅力についてもお届けます!
Photo & Text:kukka編集部
主人公の「静岡スミコ」役に決まった経緯を教えてください。
プロデューサーさんを通して、「しどろもどリ」のワークショップに参加させていただいたことが、きっかけでした。オーディションといったものではなく、楽しくワークショップに参加させていただいた気持ちでいたので、しばらく経って映画出演の連絡が来た時は、正直に言って驚きました。
自然な流れで出演が決まったとも言えそうですね。
そのワークショップも、いきなりお芝居をするのではなくて、半分くらいの時間は、みんなの自己紹介をするおしゃべりの場でした。どんなことを考えていて、どんなことが好きで、どんなことが嫌なのかをたくさん話す、ゆるっとおしゃべりをする場でした。
監督・脚本をされた福岡佐和子さんの印象を教えてください。
ワークショップの自己紹介で、好きなことや気に入ったものをお互いに紹介し合ったんです。監督が「私はサーモンとキリンとネコのおこげ(名前)が好き」、と話をされていたのを聞いて、とても面白い人だなと思いました(笑)。私は、好きなことはコレ!みたいに確立したものがないので、監督に対して不思議な世界観を持っている方だなと思ったのが第一印象です。
福岡さん、はまださつきさんの映像ユニット「しどろもどリ」の印象も聞かせてください。
すごく自然体で、特にふたり一緒にいることが自然だなと感じました。ふたりが似ている訳でもないけれど、一緒にいることが当たり前な感じです。大学の珈琲研究会で出会ったらしいのですが、コントをやったり、ラジオをやったりして、そして今はふたりで映画を撮っているんです。その時に興味のあることを、瞬発力を持って軽々とやってのけてしまうパワーがあるふたりだなと思っています。とても眩しいです(笑)
撮影現場はどのような雰囲気だったでしょうか。
すごくのんびりした現場でした。同世代の人が多いこともあり、一緒にファンタグレープを飲んだり、買い物へ行ったり、お散歩したり、楽しく撮影をさせていただきました。
では撮影現場も、劇中の雰囲気のままだったんですね。
はい。監督がニコニコしながらモニターを眺めている姿がすごく可愛らしかったです(笑)
監督から言われて印象的だった言葉はありますか。
直接、監督から何かを言われたことはあまりありません。すでに脚本に監督が当時思っていたことが書かれていましたし、「スミコはこういう人間」という1ページ分のPDFデータをもらったので、それをしっかり読み込んでいました。撮影中は監督と他愛もない話をして、それが結果的に「スミコ」に繋がっていたんだと思います。
スミコの像について監督が明確で、さらに堀さんもそのイメージをしっかり再現されていたんですね。
カットの声が掛かって監督にどうでしたか? と尋ねると監督は決まって「めっちゃ、スミコでした~」と言ってくれるんです(笑)。それが「スミコ」について監督と話をしたほぼ唯一のことだったかもしれないです。
逆に、監督から今度はこんな感じで演じてみましょう、とか時間をかけて何度か撮影をしたことは無かったのでしょうか。
無かったです(笑)。いつもスムーズに撮影を終えて、毎日3時間巻きで終わっていました(笑)
嬉しい現場ですね(笑)
はい♪ 撮影では普通は段取りをしてからテストをすることが多いのですが、しどろもどリはテストをしないので、テスト本番みたいな感じで急にカメラが回って、1~2回の撮りで終わりでしたね。
しっかりと全体像としてのイメージが監督にある感じが伝わります。
カッコ良いですよね、それで撮ってしまうのって。でもフワッと撮っているようでいて、きちんとこだわりがあるから、それは凄いことだなと思いますね。
堀さんが感じた、そのこだわりってどんなところでしょうか。
監督が可愛いと思うかどうか、ちょっと上手くいかなかった、ちょっとヘンテコなところが好き、あと私がちょっとやり過ぎた時にすぐにバレるところとか、そういったところで監督のこだわりを感じていました。考えてみて、私が少し作為的に演じようとすると、「もうちょっと普通で良いです」と言われたりしたので、きちんとスミコとしてそこにいるかどうかの本能的なジャッジのようなものが鋭いなと感じていました。
監督もそうですし、現場も緩やかな雰囲気そうですね。
仕方ないのですが撮影現場が少しピリピリすることはたまにはあるんです。でも、今回の撮影はそのピリピリした時間が1秒も無かったです(笑)
それでも、時間前に撮影が終わるんですよね。
そうなんです。なんていい現場だ(笑)。しかも、こんな良い作品ができあがってしまうなんて♪
楽しそうな現場の雰囲気が堀さんからも伝わってきますね。
ただ、今回の撮影で特に大変だったことがあって、それが初日にラストのシーンを撮影したことなんです。きちんとラストシーンらしい顔ができたかなと思っていました(笑)
それは役者さんとしては貴重な経験にもなりましたね。
演じた「スミコ」との共通点、また違っている点、あれば教えてください。
突拍子もなく思ったことを口に出したりするところは私にも似ていると思います(笑)。またそれを許してくれる友だちがまわりにいることも似ていると思います。この作品に登場する人たちは、「スミコ」の話を遮ったり、否定する人は出て来ないんです。監督に、それって優しい世界ですよね、と話し掛けことがあるんです。そしたら「え、そうですか? 私のまわりって割とこんな感じが普通なんですけど」と意外そうな返事だったんです(笑)。あと、思い立ったらすぐに行動するところは似ていますね。似ていないところは「スミコ」みたいに道端でケーキは食べられないところです(笑)
劇中にも登場した「スミコ」が大好きなサーモン。堀さんも好きですか。
もちろんサーモンは好きなんですけど、監督が異常なほどのサーモン好きなので、私が軽々しく「好きです」とは言いづらいです。もし監督がこの記事を読んだら「私の方がサーモンを好きです」と言われてしまいそうなので、迂闊にサーモンが好きとは言えないです(笑)
ほかに堀さんが演じてみて、そんな考えもあるんだ、と感じたシーンはありましたか。
猫の背骨について、考えたことも無かったですね。この作品の撮影以来、街で猫を見かけるとつい猫の背骨に目が行ってしまいます(笑)
本作は「スミコ」が22歳から23歳になる頃が描かれています。もし当時の自分に話しかけるとしたら、どんなことを伝えたいと思いますか。
22歳は働いていた保育園を辞めたタイミングなんです。役者と保育園の仕事を掛けもっていて、いろいろと考え悩んでいた時期です。大学も出て、これからどうしようかと考えていました。なので、声を掛けるとしたら「大丈夫だよ」と言ってあげたいです。何歳の時の自分であっても過去の自分に声を掛けるとしたら「大丈夫だよ」となると思います。でも、22歳の自分がそれを言われたら「大丈夫じゃないよ!」と言ってしまうかも知れないです(笑)
堀さんが思う、ここを観て欲しい、見逃してほしくないポイントを教えてください。
一番好きなシーンは、はまださつきさん演じる「はな」と洗濯物を干しながら会話するシーンです。お互いのことを大切に思いながらも、心配を直接ぶつけるのではなくて、同じ時間を同じ場所で過ごすことが、とても尊いなと感じました。
劇中、たくさん食べるシーンが出てきます。特に印象に残った食べ物はありますか。
ピザがめちゃくちゃ美味しかったです♪ 監督がアルバイトをしているお店のピザで、実際に焼いてくれたんです。荻窪のピザ屋さんなんですが、ぜひ皆さん、食べに行ってほしいです! ピザは一人では食べられない食べ物なので、誰かとご飯を食べる喜びがピザには詰まっているんだと思います。
ケーキをきれいにカットするシーンがありましたね。カットする練習はされたのでしょうか。
本物のケーキで練習はできないので、iPadを使ってケーキを切る練習をしました(笑)。練習した甲斐があって良かったです♪
『スミコ22』を観た方には、どんな気持ちになって欲しいと思いますか。
映画を観た帰り道にちょっとした風の気持ち良さとか、咲いている花の可愛さとか、世界と自分のことが少しでも好きになれる気持ちになってもらえたら嬉しいですね。あと、美味しいご飯を食べて帰ってほしいです。今日は好きなもの食べよう、と思えたら幸せな日だと思います♪
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プライベートなことも質問させてください。最近のワタシ的ニュース、何か教えてください。
ちょうど昨日、Macのパソコンを買いました!(笑)。最近、母からVlogカメラを譲り受けたんです。まったく世に出していないのですが、そのカメラにもの凄くたくさん撮り溜めた私のVlogがたくさん入っています。世に出す予定は無いのですが(笑)、それを今Macで編集し始めました♪
その作品は観ることができないですね。
世には出す予定はありません(笑)。昨日は、私のモーニングルーティンを撮りました♪
観たいです(笑)
いえ、世には出ません(笑)
何も予定のない日、何をして過ごしますか。
家で過ごすことが多いんですが、突然ひとりで出かけることもあります。この間は、大島に行きました。
あの東京都の大島ですか。
はい、そうです♪ ひとりでどこへでも行けます! ひとりではなかったですが、この前タイにも行きました。ひとり旅をする時には、よく民泊を利用するんです。そこで出会う人と交流したりする旅が好きなんです。旅行はできるだけ、現地の方と喋って、人生に疲れた時、立ち寄る居心地ポイントを探すことが旅の目的でもあるんです。
いろいろ質問をしたくなる回答ですね(笑)。ではこれから何の運動をしていきましょうか。
プライベートでこれからやってみたいことは何かありますか。
体を動かしたいです。コロナ禍にカバディをしていたんですが、大ケガをしてしまったんです。それ以降、運動から離れてしまっているので、運動をしたいですね。
パルクールとか……、でもまたケガしそう(笑)。あ、アクションをやりたいです!
いつか華麗な身のこなしをする堀さんをスクリーンで観たいですね。
まさか「スミコ」を演じた人間が!と思うくらい、早すぎて見えないくらいの動きをする役を演じてみたいですね(笑)
それでは、最後に映画を観てくれる方々へメッセージをお願いします。
スタッフ、キャスト全員で愛を持って、人間って何だろう、どうやって生きて行こう、好きなことって何だろう、を見つめながら大切に作った作品です。ぜひ映画館に足を運んで観て欲しいです。観たあとで、最近考えていることとか、一緒にお喋りしたいと思います。ぜひSNSで観た感想を投稿して欲しいです。私、全部、見ているで♪(笑)
【映画情報】
2024年6月29日(土)公開 新宿 K’s cinemaほか
『スミコ22』
友人とエビフライパーティーをしている静岡スミコはふと思う。自分の感覚がいつの間にかひど く曖昧なものになっている。何が猛烈に好きで何が耐え難く嫌いか、何を面白く思っていて何を喋りたいの か、そのどれをもちっとも感じられないまま人生を過ごしてしまっていると。 大学を卒業して入社した会社を4ヶ月でやめたスミコ。新生活の中で、自分がたしかに思っていることを た しかに思っているな と思いながらすごそうとしている。
<キャスト>
出演:堀春菜 はまださつき 松尾渉平 樹 安楽涼 梶川七海 イトウハルヒ 川本三吉 遠藤雄斗 瀬戸璃子 中川友香 安川まり 原恭士郎 黒住尚生 東宮綾音 木村知貴
ナレーション:工藤祐次郎
<スタッフ>
監督・脚本・編集:福岡佐和子
プロデューサー:髭野純
助監督:はまださつき
制作:原恭士郎 撮影・ グレーディング:中村元彦 録音・整音:堀内萌絵子 録音助手:稲生遼 制作応援:藤咲千明 スタイリ スト:大場千夏 スチール:新藤早代 音楽:ゴリラ祭ーズ 宣伝デザイン:東かほり
主題歌:ゴリラ祭ーズ「日記」
企画・制作:しどろもどリ
製作・配給:イハフィルムズ
映画『スミコ22』公式サイト https://sumiko22.amebaownd.com/
公式Instagram:@sumiko_22_
公式X:@sumiko_22_
©スミコ22
【プロフィール】
堀春菜 Haruna Hori
堀 春菜(ほり・はるな)。1997年3月17日生まれ。神奈川県出身。160cm。
2014年『ガンバレとかうるせぇ』主演で女優デビューを果たす。2017年『空の味』で主演を演じ、第10回田辺・弁慶映画祭 女優賞を受賞。2018年、音楽をテーマとした日韓合作映画『大観覧車』で主演に抜擢。以降も2018年『万引き家族』(是枝裕和監督)はるみ役、2023年、『わたしの見ている世界が全て』(近圭太郎監督)松永明日香役など多数の話題作に出演する。2024年6月29日公開の映画『スミコ22』では主人公スミコ役を演じる。「2023年に続き、LIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」2024 PART I STARRY / PART II 秀華祭(2024年9月7日 - 23日、THEATER MILANO-Za)への出演を予定。
公式Instagram:@horiharuna_official
公式X:@ happyharuna0317