彗星の地球衝突による人類滅亡の日が迫る中で、ばらばらに育った3姉妹が時間をかけて家族となる姿を、瀬戸内を舞台に描かれた作品『とおいらいめい』(8/27公開)。3姉妹によるトリプル主演で3女の「音」を演じ、注目を集める女優・髙石あかり。17歳の一年間に3度の撮影に挑み、初の映画出演に打ち込んだという。今や、映画、舞台に引っ張りだこの髙石あかりが、コロナ禍に自身とも向かい合い人の大切さに気づいた中で演じ切った本作。感動のラスト長回しシーンに関する思いのほか、意外な一面を見せるプライベート秘話についても語ってくれました。
Photo:望月宏樹
Text:kukka編集部
今作『とおいらいめい』のあらすじと見どころを教えてください。
瀬戸内海・岡山を舞台にした3姉妹の物語です。私が演じた宮田音と腹違いの姉妹たちは年が離れているのですが、数ヶ月後の2020年、彗星衝突により地球が滅亡することをきっかけに同じ家で暮らし始めます。そこで起こる出来事を通して、3人の姉妹の心がどう動いていくのか、どうお互いに寄り添っていくのかが描かれた作品です。
撮影はどのようにして行われたのでしょうか。
ロケ地である瀬戸内海に面した岡山滞在中は、撮影監督の長谷川さんのご実家に住まわせていただき、そこにスタッフみんなで暮らしていました。朝、作って頂いたおにぎりをロケ地まで移動する車の中で食べたりしながら撮影したのを思い出します。
役者としての一面だけでなく、素の自分もスタッフみなさんと共有しながらの撮影だったんですね。
そうなんです。だから本当の家族みたいに全員で作った作品だと言えます。
音役を演じるにあたり、監督などからの要望はあったのでしょうか。
3姉妹の物語なので、本当の姉妹のように3人には感じてお芝居をしてほしいと伺っていました。だから姉を演じられた吹越さんと田中さんのことは撮影以外でもずっと “お姉ちゃん”と呼んでいましたし、お二人も私のことをずっと“音ちゃん”と呼んでくれていました。また大橋監督は、姉妹を演じるわたしたちが感じることに任せてくれることもありました。それだけ、「家族」として感じる空気感や気持ちにこだわった作品だったと思っています。
役者として貴重な多くの経験を17歳で感じられたのは大きな財産になりましたね。
演じながらみんなで話し合って生まれたシーンも多くあり、いま観ると当時を振り返って懐かしく感じます。
今こうして19歳になり振り返ると、役者として一番何を得た作品だと感じていますか。
映像作品の経験がまだなかった時でもあったので、この作品は初めてのことだらけで、その時その時の“今”を生きるのに必死に臨んだ作品でした。なかでも長回しのシーンなどは「空気を途切れさせない芝居」、そういうことも教えていただいた記憶が鮮明にあります。私にとっては、役者の階段を一歩ようやく踏み出せたような作品です。
髙石さんにとって教科書のような作品になりましたね。
本当に、そうですね。この当時は、撮影の現場で受けた影響を、そのまま全部受け返していた印象です。3回に分けて撮影をしたのですが、いざ撮影に向かう時は本当に家族の元へ行く気分でした。「音」に気持ちがすぐに切り替わることができて、家に帰るような気持ちで撮影をしていました。
本作を一観客として観た時、作品の感想を聞かせてください。
日没の12分間の長回しシーンがあるんです。演じている時には感じなかったんですが、鑑賞している時に私は「生きたい」とか「生命力」を感じたんです。ぜひ映画を観てくださる方にはそういった “生きる”ことを感じて観て欲しいです。
髙石さんはご自身の作品を観られる時に、一観客として観るタイプですか、それともやはり役者としての視点で作品を観てしまうタイプですか。
役者として観てしまいます。「今の私だったら、このシーンはこうするな」とか(笑)。反省する気持ちではないんですが、今の私ならこう演じるかも、という感覚です。
共演された吹越さん、田中さん、それぞれどのような印象でしょうか。
これは監督の思い通り、みんな役にぴったりな方ばかりでした。吹越さんは本当に長女でみんなを引っ張ってくれるようであり、3人でいる時にその場に真っ直ぐ一つの芯を落としてくれるような存在でした。田中さんは、実際も3姉妹の真ん中の次女らしいのですが、やっぱりバランスが良くて、3人でいるとその場を暖かく和らげてくれるような存在です。私は末っ子らしく本当に甘えさせてもらいました(笑)。
先ほど、映画作品としての見どころは伺いましたが、髙石さんご自身の演技でここを観て欲しいシーンはどちらでしょうか。
先ほど話した12分の長回しなんですが最初の3言くらいしか台本には書かれていなく、残りはすべてアドリブだったんです。計算されてない、言い換えれば作っていない芝居で、その場の空気から生まれてきたものを表現したシーンでもあります。そういった自然な芝居や表情にも注目して観てもらえると嬉しいです。」
ノストラダムスの大予言で人類が滅びるとされた1999年に髙石さんは生まれていなかったのですが、地球が滅ぶ、人類最後の日が来る、といった想像はイメージできたのでしょうか。
いえ、なかなか想像することができなかったです。全員が地球最後の日を意識するんですよね?だから、世界が終わるかもとみんなが思っている、その空気感を私も味わってみたかったなと思います(笑)。全員が全員、地球最後の日のことを想像することって今はないですよね。その最後の日をまたいでみたいです。0時を跨いだ瞬間に「生きてる!」っていう気持ちを感じたいです(笑)。
実際に地球最後の日が来るとなったら、髙石さんはどうされますか。
どうしましょう?(笑)。やっぱり映画と同じで家族と過ごすと思います。いま質問されて、家族の顔が自然と思い浮かびました。でも最後、どうせだったら家族みんなで集まってパーティーしたいです。部屋に飾り付けとかして(笑)。
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髙石さんのプライベートの話も聞かせてください。家族といえば、仲の良いお兄さんですが、以前のインタビューではパスタを作ってくれる話をされていました。今も変わらず作ってくれるのでしょうか。
それが最近、兄が食事制限をしていてサラダチキンしか食べないんです。なので作ってくれなくなりました(笑)。でも変わらず、一緒に洋服を買いに行ったりしています。
もうひとつ。今も、一緒にギターを弾いたり歌を歌ったりされているのでしょうか。
はい、一緒にギターも弾くし、歌も歌っていますね。なんでそんなに仲良いんでしょうね(笑)。この間も、兄と二人で京都旅行してきました。
すごいですね。兄妹で買い物までは出かける方もいると思うのですが、旅行はすごいですね。ちなみに、旅行での一番の思い出は何でしたか。
兄の付き添いでお寺巡りをして、祈祷をしてきました。あとは坂本龍馬のお墓にも行ってきました。
現在19歳の髙石さんですが、12月に20歳になりますね。10代の最後、何をしましょうか。
10代であることを言いまくろうと思います(笑)。
20歳になったらやってみたいことは何でしょうか。
親と一緒にお酒を飲んでみたいです。年末年始に実家に帰って、ビールで親と乾杯したいです。
では最後に映画を見てくれる方々にメッセージをお願いします。
いまはコロナ禍ということもあって、生きる上で自分に必要なものについて考えさせられる期間だったのかなと思っています。それが私には「人」でした。「人」がいないと生きてはいけないんだなということを改めて実感できましたし、コミュニケーションや会話が必要だなと実感することができました。それを「音」や3姉妹の姿を見て、自分の姿を照らし合わせて、再確認できる作品だと思います。長回しシーンも私にとって大事なシーンで、生きようと思わせてくれる作品だなと実感していますので、ぜひ映画館で観て感じて欲しいです。
2022年8月27日
映画『とおいらいめい』
彗星の衝突により人類の滅亡が数ヶ月後に迫った2020年。小学生だった1999年にノストラダムスの予言を信じ、家出をした長女・絢音と次女・花音と、その後生まれた腹違いの妹・音が、初めて一緒に生活することになる。
絢音は、彗星の衝突を前にシェルターの個室の設計を担当しており、暴力によるシェルター強奪の危険と隣り合わせの日々。花音は、帰郷を機に、妻とうまくいっていない妻子持ちの小学校の同級生・良平と再会。音は、未成年ながらひょんなことから飲み会サークルと出会い、飲んだ帰りに花音が良平にキスするのを目撃。
互いに踏み込めず、すれ違う3姉妹は、世界の終わりを前に、本当の家族になれるのか。
<出演>
髙石あかり 吹越ともみ 田中美晴
ミネオショウ 大須みづほ 森徠夢 武井美優 古矢航之介 三原哲郎 川辺純子 石橋征太郎 大田恵里圭 園山敬介 タカ海馬 荒井 啓仁 舞木ひと美
藤田健彦 しゅはまはるみ
<企画・製作・配給>
ルネシネマ
<監督・脚本>
大橋隆行
<原作>
とおいらいめい(2004 年上演舞台)
<撮影監督>
長谷川朋史
2022 年/日本/シネマスコープ/ステレオ/150 分 ©ルネシネマ
公式サイト https://runecinema.com/tooiraimei/
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髙石あかり・プロフィール
2002 年12 月19 日生まれ。宮崎県出身。2019年より女優活動を本格化。2020 年と2021 年に舞台「鬼滅の刃」で竈門禰豆子役に抜擢さ れ話題を集める。2021 年公開の映画『ベイビーわるきゅー れ』(阪元裕吾監督)で主演した他、現在放送中のドラマ「生き残った6人によると」(二宮健監督)にレギュラー出演中。映画「追想ジャーニー」(11/11公開)にも出演する若手注目の女優。
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