6月26日(金)に公開した映画『死神バーバー』で、7年ぶりの主演映画となる俳優・桜井日奈子さんへのインタビュー。2年前の舞台をきっかけに届いた今回の出演オファー。明朗闊達な桜井さんが本作出演で感じた「死生観」や「人との関わり」を、笑顔とともに存分に語っていただきました。プライベートでは、シソンヌじろうさんの影響ですっかり「青森愛」な桜井さん。おすすめの観光案内も語ってくれています。

PHOTO:望月宏樹
STYLE:有咲
HAIR & MAKE UP:Hitomi(Chrysanthemum)
TEXT:kukka編集部

主演映画に出演させていただくのは、7年ぶりのことになります。やはり主演としてお話をいただくのは、役者としてとてもテンションが上がることなので、「よし、やってやるぞ!」という気持ちになりました。
実は、今回キャスティングしてくださったのは、2年前に私が出演した舞台『138億年未満』を観に来てくださった方なんです。そこからご縁がつながって今回のオファーをいただいたので、「一緒に仕事をしたい」と思ってくださったことがとても嬉しかったです。
また、脚本がすごく面白かったことも覚えています。扱っているテーマは「別れ」や「死」に関することなので、重たい話になるのかと思いきや、ポップさもあり、温かさもある作品だと感じました。観終わった後に、自分の大事な人をもっと大切にしようと思えるような、前向きな気持ちになれる脚本だったので、「これはぜひやりたい」と思い、お受けさせていただきました。

オムニバス形式で描かれている作品なのですが、それぞれの物語に登場する人たちの後悔に対して、死神が「人間はバカなのか」と語るシーンがあるんです。確かに、分かっていても素直になれない人間って愚かだよな、と考えさせられる部分があって、そこが面白いなと思います。
また、いまおか監督の演出がすごくポップなんです。何の脈絡もないような動きを演出として加えることがあって、例えば「ここで大きな声を出してみて」とか、「ここで変な動きを入れてみて」とか。ただ、私自身はそうした演出を付けられた時に、どう動いていいのか分からなかったんです。もしかしたら役の整合性が崩れてしまうんじゃないか、と思うこともありました。でも、完成した作品を観た時に「なるほど」と思いました。ちゃんと役として成立しているんです。それが時には強がりに見えたり、素直になれない人間らしさとして表現されていたりして。その演出が入ることで、作品全体がよりポップに仕上がっていると感じました。
例えば、カナヅチを道具箱から取り出すシーンでは、監督に「ネコ型ロボットみたいな声を出して」と言われたんです(笑)。それで「カ〜ナ〜ヅ〜チ〜」と言ったんですが、「これは使われるないだろう」と思っていたら、実際にはちゃんと使われていて(笑)。そういう遊び心のある演出がスパイスになって、この作品ならではのポップな魅力につながっているのだと思います。

不器用な人だなと思っていました。一生懸命に強がるんですけど、その根底には弱いところを見せたくない気持ちや、人に弱さを見せられない弱さがある。だからこそ強がったり、イライラしてしまったり、ときには人に当たってしまったりする女性なんだと思っていました。
ただ、自分が悩んでいる人間関係についても、本当はもっとうまくやれるはずだし、その方法も分かっているんです。でも、それができない。強がってしまう自分を隠すために、鎧のようにさらに強がってしまうところがある人なんだな、と感じていました。

「美帆」がプリプリと怒っているシーンが序盤から続くのですが、私自身も感情が乗ってしまうと、つい勢いが出てしまうタイプなんです。なので監督からは、「美帆がちょっと怖いから、もう少しマイルドにして」と言われました(笑)。監督は怖い女性が苦手なんだそうです(笑)。
あと、「美帆」についての話ではないのですが、撮影前に監督と顔合わせをした際、「どういうふうにやったとしても、僕がちゃんと作品にするから大丈夫」と言ってくださったんです。その言葉があったので、安心感はありました。

普段は表に出さないように気をつけていますが、心の中ではイライラすることもあります(笑)。「美帆」の感情の乗り方に関しては、私も近いものがあると思いますし、素直になれないところも共通していると思います。
「美帆」は親に素直になれない部分があるんですが、実は私もそうなんです。親の前だと、なんだか格好つけてしまうところがあって。実家にもよく帰るのですが、仕事のことを聞かれても「いや、別に」「全然うまくやってるけど」と強がってしまうんです。心配をかけたくないという気持ちがあるので、今でもそういうところはありますね(笑)

この仕事を始めて12年目になるのですが、以前ご一緒した方と現場で再会することが時々あります。お互いが少しずつ成長した姿で再会できた時には、「頑張ってきてよかったな」と感じます。当時とは違う価値観を持っていて、昔よりも深く話し合えるようになっていたりすると、自分も相手も前に進んできたんだなと実感します。そうしたご縁を大切にしながら、また次につなげていきたいと思っています。
この仕事は、人とのつながりの積み重ねだと思うんです。人と人とのつながりが次の仕事につながっていきますし、逆にそのつながりが途切れてしまうと続いていかない部分もあると思います。だから映画や舞台、ドラマの現場では、いつも「次につながる仕事にしたい」という気持ちをどこかで持ちながら取り組んでいます。今回の映画も、もともとは舞台でのご縁からつながったお話でした。そういう意味でも、とても素敵なご縁だったと思っていますし、この作品がまた次の作品へとつながっていったら嬉しいですね。

「昔より話しやすくなったね」と最近よく言われるようになりました。昔は今よりも人間関係に怯えていたんだと思います。傷つくことや傷つけられることが怖かったんですよね。でも今は、当時よりも肩の力を抜いて楽しく仕事ができていると思います(笑)

オムニバス形式で、それぞれの人物の最後の時間が描かれている作品なので、誰にでも必ず終わりが訪れるという事実を改めて考えさせられました。客観的に観ているつもりでも、決して他人事には思えないんです。最後の時間と向き合う登場人物たちを見ながら、自分はどんな終わり方をするのだろう、と考えました。
「美帆」は人生最後の5日間を生きています。突然終わりが訪れるのではなく、自分の人生のカウントダウンが始まっている状態です。でも私たちは、その時がいつ来るのか分からないだけで、実は誰もが同じように人生のカウントダウンの中を生きているんですよね。だからこそ、この作品は決して他人事ではありませんでした。そして、どのキャラクターも何かしらの悔いを残しながら別れを迎えていく姿を見て、どれだけ一生懸命に生きても、人はきっと何かしらの後悔を抱えたまま終わりを迎えるものなのかもしれない、と感じました。
こういう死をテーマにした作品を観ると、「これからの時間を大切にしよう」とか、「大切な人に感謝を伝えよう」と思うじゃないですか。私自身もそう思いました。でも、人ってその気持ちをいつの間にか忘れて生きてしまうんですよね(笑)。そういう人間の愚かさも、この作品のテーマの一つなんだと思います。もちろん、それを否定しているわけではありません。そういう弱さや愚かさも含めて、「人間ってそういうものだよね」と肯定してくれる作品なんだと感じました。

もちろん家族と過ごすと思います。でも、私はこの仕事が本当に好きなんです。しかも年々、その気持ちが強くなっていて。だから最後の最後まで俳優の仕事をしていたいですね。作品や言葉など、何か形として残るものを残したいと思うかもしれません。5日間で撮れる作品なんてなかなかないでしょうけど(笑)

どの現場でも言われていることだと思うのですが、とにかく落ち着いている方でした。ご一緒した当時、日穏くんはまだ19歳だったのですが、すでに達観しているような雰囲気があって。とても10代とは思えない落ち着きを感じました。いまおか監督は、一見すると脈絡のないような演出をされることがあるんです。私は「これで大丈夫なのかな」と一瞬悩んでしまうこともあるのですが、日穏くんは「はい、分かりました!」と受け止めて、スッと演じられるんです。実際には本人も迷っていたのかもしれません。でも、とりあえずやってみるという潔さがあって、その姿勢がとても印象的でした。「サクマ」という難しい役をしっかり演じ切っている姿を見ていると、末恐ろしいなとも思いました(笑)。9歳も年下だとはとても思えなかったですし、「私も頑張らなきゃ」と思わされました(笑)

撮影中、日穏くんはちょうどオーディションに向けてレッスンや練習をされている時期だったんです。その頃に、日穏くんが歌って踊っている動画を見せてもらったことがありました。それが本当にキレキレで(笑)。歌もダンスもすごく上手で、「この人は絶対にデビューするんだろうな」と感じましたし、これからトップランナーになっていく人なんだろうなと思っていました。だからこそ、当時からすごく眩しく見えていましたね(笑)。だって、踊れて、お芝居もできて、本当に怖いものなしだと思います。

美容師の方に実際のカットの仕方を教えていただきました。マネキンもお借りして、自宅に持ち帰り、ハサミでカットする練習をしていたんです。その時に初めて知ったのですが、美容師さんってハサミの穴に指をしっかり通して使うわけではないんですよね。普段美容室に行っても、私たちはなかなかハサミの使い方までは見ないじゃないですか。輪っかがあるのに指を通さずに扱うのが本当に難しくて、「なんでここに輪っかがあるのに指を通さないんだろう」と思いながら練習していました(笑)

実はここだけの話なんですが、趣味でバスケットボールをやっているんです。仲間と集まってやっているんですが、そのバスケットボールで突き指をしてしまって撮影に臨んでいたんです(笑)

「美帆」を演じる上では、彼女に残された時間があと何日なのかを常に意識しながら現場に入っていました。物語の序盤の「美帆」は、「もうどうでもいい」というような気持ちで生きています。でも、人生のカウントダウンが進むにつれて、本当はどうでもよくなかったことに気づいていくんです。それまでないがしろにしてきた人や出来事と向き合わざるを得なくなり、実際に向き合ってみると、「なんでこんな簡単なことができなかったんだろう」と感じるようになる。その変化はとても大切に演じたいと思っていました。
実は今回で、死と向き合う役を演じるのが連続しているんです。死んでしまう役だったり、死が近くにある役だったり、そういう作品が続いていて。だからここ数年は、「死」というものについて考えざるを得ない時間が本当に長かったと思います。でも、作品が終わるたびに忘れてしまうんですよね(笑)。あれだけ「日々を大切に生きよう」と思っていたはずなのに、気が付けばまた忙しさに追われてしまう。結局、人間ってそういう生き物なんだと思います(笑)。

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私は基本的に死神の「サクマ」と一緒に行動しているので、「美帆」と「サクマ」の関係性の変化をぜひ見ていただきたいです。最初の「美帆」は、「サクマ」のことをまったく信用していません。でも、「サクマ」が人を送り出す姿や、その優しさを間近で見ていくうちに、少しずつ信頼していくんです。そして、自分の弱い部分も少しずつ見せられるようになっていきます。一方で、「サクマ」にも、本当は素直になればいいのに素直になれない部分がある。その心を「美帆」が少しずつ動かしていくんです。そうやって二人の距離が少しずつ縮まり、お互いに本音を伝えられるようになっていく。その関係性の変化は、この作品の大きな見どころの一つだと思っています。

実は、やろうやろうと思っていて最近ようやくできたことがあるんです。それが青森に行くことでした。私はお笑いコンビ「シソンヌ」のじろうさんが好きで、「さくらまつりの時期に行くといいよ」と以前から教えていただいていたんです。でも、なかなかタイミングが合わなくて行けなかったんですよね。今回は仕事とうまく絡めることができて、ようやく行くことができました(笑)

大好きになりました。
訪れた場所も、じろうさんがおすすめしてくださった団子屋さんや忍者屋敷など、行く先々で感じたのは人の温かさでした。じろうさんが本当に愛されている方なので、どこへ行っても温かく迎えていただけたんです。そのおかげもあって、青森という場所そのものがとても好きになりました。
また絶対に行きたいと思っているのが、じろうさんがよく通われているビールのお店です。1階に醸造所があって、2階で出来たてのビールを楽しめるんですよ。世界的な賞を受賞したビールもあって、とてもおいしかったです。アメリカ出身のギャレスさんが営まれているお店なのですが、私自身もビールが好きなので、ぜひまた訪れたいと思っています。
>>Be Easy Brewing / ギャレスのアジト

現実では、自分がいつこの世に別れを告げることになるのか分かりません。多くの場合、それは突然訪れるものだと思います。でも、この作品では、大切な人に会うための時間が少しだけ与えられています。「もし自分にそんな時間が与えられたら、何をするだろう?」と考えさせてくれる、とても優しい作品です。きっと観終わった後には、大切な人に会いたくなったり、これからの人生をもう少し前向きに生きてみようと思えたりするんじゃないかなと思います。
「死」をテーマにした作品ではありますが、あまり難しく考えずに楽しんでいただけたら嬉しいです。この作品は「人間らしさ」や「人間臭さ」を描いた物語でもあります。もしかしたら、この作品を観て死生観が変わる方もいるかもしれません。でも、時間が経てばまた日常に戻って、その気持ちを少しずつ忘れていく。それもまた人間らしさだと思うんです。そして、この作品はそんな人間の弱さや愚かさも含めて肯定してくれる作品だと思っています。登場人物たちが最後の時間と向き合う姿に、ご自身を重ねながら楽しんで観ていただけたら嬉しいです。


【プロフィール】

桜井日奈子 Sakurai Hinako

桜井日奈子(さくらい・ひなこ)。1997年4月2日生まれ。岡山県出身。インセント所属。
2016年に舞台「それいゆ」で舞台デビュー。以降、映画「殺さない彼と死なない彼女」('19年)、ドラマ「人事の人見」(’25年/フジテレビ系)、舞台「シャイニングな女たち」(’25年,26年)など話題作に多数出演。直近ではドラマ「余命3ヶ月のサレ夫」(’26年/テレビ朝日系)ではヒロインを務めたほか、「コンサルタント-死を執筆する男-」(’26年/WOWOW)、実写映画「SAKAMOTO DAYS」、7月9日(木)スタートの「ラストノート」(’26年/フジテレビ系)にも出演。幅広い作品でそのたしかな演技力と希少な存在感が支持されている。

公式サイト:https://incent.jp/incent/talent/sakurai/
公式Instagram:https://www.instagram.com/sakurai.hinako_official/
公式X:https://x.com/hinako_incent


【作品情報】

2026年6月26日(金) 新宿武蔵野館ほか全国順次公開

映画『死神バーバー』

ある日、職場でもプライベートもうまくいかずイライラしていた美帆はうっかり階段で足を滑らしてしまう。 その後、目を覚ますと目の前にいた新米死神・サクマに自身が死んだことを告げられ、怪しい美容室「冥供愛富(メイクアップ)」に連れてこられる。そこは死者の魂が冥土に送られる前に訪れる場所だった。現世と冥土を行き来することができる死神たちは、あの世に送られる前に最後のスタイリングをして現世に残された家族や大切な人を1日だけ繋ぎ、「最期の別れ」の手助けをしている。しかし、サクマのミスにより、美帆の本当の死は数日後であることが判明してしまい…。

<出演>
桜井日奈子 日穏
岡部 大 平井亜門 猪塚健太 佐久間祥朗
河屋秀俊 武田 暁 山脇辰哉 細井じゅん
坂巻有紗 日高七海 光嶌なづな 荒井啓志 佐々木ほのか
山下敦弘 川上さわ 守屋文雄 森蔭晨之介 西山真来
工藤 遥 宇野祥平 / 美保 純

監督:いまおかしんじ
脚本:谷口恒平
主題歌:Furui Riho「太陽になれたら」(LOA MUSIC / PONY CANYON)
音楽:大槻美奈 撮影:達富航平 照明:及川凱世 録音・整音:三門優介
原案:梅木陽一 企画・キャスティング:直井卓俊
製作: 『死神バーバー』製作委員会
制作プロダクション:レオーネ
製作幹事:SPOTTED PRODUCTIONS ポニーキャニオン
©︎『死神バーバー』製作委員会

公式サイト:https://www.shinigami-bb.com/
公式Instagram:https://www.instagram.com/shinigami__bb/
公式X:https://x.com/shinigami__bb

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