Photo:望月宏樹
Text:kukka編集部

主演として携わらせていただくことで、撮影前の段階から脚本に関して、自分の意見を監督と話し合わせて反映していただくことがありました。そういったことはこれまでの現場では経験してこなかったことなので、とても貴重なことでしたし、またとてもありがたいことだなと思いました。

あらすじ程度は読みました。というのも、今回の作品はあくまでエッセンスとなる原案として引用されています。読み過ぎてしまうことで、かえって原案に引っ張られてしまうのも違うのではと思い、あまり意識せずにいました。

「渡会」がコミュニケーションを取ることが苦手なタイプだという点です。そういったところは自分の学生時代を思い返してみると、割と近い部分があったんです。だから。その当時の記憶を呼び起こし、引っ張ってきました(笑)。コミュ障というか、オタクな気質だったかつての自分を前面に出して演じてみたら良いのでは、そういった作業を自分の中で行いました。

意外と根っこの部分では主人公に共感するところがあるんです(笑)。今回はそれを前に出そうという意識しました。

中編作品のため、どうしても描ききれないことが多くあると感じています。「渡会」の病的なことから始まる作品ですが、彼がなぜそこに至ったのか、彼がどのような経緯で歳を取り、今後どうなっていくのか、そういったところは、どうしても断片的にしか描かれないと思うんです。主人公の行動原理みたいなものがどこにあるのか、それについて監督と一緒に考えていきました。

そうですね。何度もリハーサルをさせていただきましたし、撮影外の日でも電話で相談させていただくこともありました。

何度かあります。自宅で他人の部屋を覗くシーンですね。覗くだけではなく、作品では音も聞いている設定だったので、すでに撮り終えた、覗かれている側の映像と音声を毎回確認しながら演じさせてもらいました。覗いた先の映像と音声を確認させてください、と自分から提案したシーンでもあったので、象徴的なシーンだったと思います。

主人公の「渡会」にしてみると、生活のごく当たり前なシーンで、日常の一部に過ぎないこととして描かれています。単に覗いているだけではなくて、覗きながら何をしているのかが大事だと思いました。

実際はものすごく寒かったです(笑)。特に湖でのシーンは凍えるかと思うほどの寒さでした。これまでの撮影で一番過酷だったかもしれません。

映像がとても美しいと思っていて、特に湖のシーンでは素晴らしい絵づくりだと感じました。ぜひその映像美を収めた湖のシーンには注目してほしいですね。現場にいても綺麗な景色だなと思っていましたが、仕上がった映像を見て、改めてこんなにも綺麗だったのかと気付かされました。

あと、レンズで覗くシーンが多い作品でもあります。カメラワークで、寄ったり引いたりしているのですが、昨今の映画ではあまり使われていない手法だと思うんです。「渡会」の視点に合わせたそのカメラワークが面白い作品でもあるので、ぜひその点にも注目してみてほしいですね。

幼い頃から見る夢があって、見ている時はめちゃくちゃ怖いんです。本当に冷や汗をかくくらい怖いんです。起きて、その瞬間にまたあの怖い夢を見たと思うのですが、それを人に説明しようとするとできない夢なんです。不思議なんですけど(笑)

怖いということだけで、何が怖いのか、どういうシーンがあって怖かったのか、まったく思い出せないんです。なんとなくの景色は頭の中にあるのですが、それを言語化できなくて。同じ夢だという認識もあって、起きた瞬間に「また、あの夢だ」と思うんです。大人になってからは、ほとんど見ることがなくなったけど、やっぱり説明が今もできない夢ですね。

いえ、死の恐怖とも違うんですよね、多分……。物心がつく前から見ている夢なんです。その頃から見ている怖い夢なので、おそらく死に関するものではないと思います。でもいつかこの夢を言語化してみたいと思います。

予定のない休みの日は、ちょっと早起きをして、洗濯をして、午前中に干したいタイプです(笑)。太陽の光で目を覚まして、太陽の光で洗濯物を干したいです。ゆっくり家事をして、午後になったら銭湯へ行きます。たいていの銭湯は午後3時頃から営業していることが多いので、その開く瞬間に行くようにしています。一番風呂を入りたいんです(笑)。よく行くところは、サウナもある銭湯なのですが、そのサウナは本も読んで良いサウナなんです。本や漫画を読みながら、今日の夜ご飯は何にしようと考えながら、サウナを3セットくらいします。お風呂を出たら、コーヒー牛乳を飲んで、サウナの中で考えた献立の食材を買いにスーパーへ寄って家に帰ります。夜ご飯を作り、好きな映画やアニメを見ながら、それを食べるのが自分らしい休日の過ごし方です(笑)

本当に銭湯のシャッターが開く瞬間に入っていくような感じです。以前に役所広司さんが出られていた映画『PERFECT DAYS』にも同じようなシーンが出てくるのですが、その主人公にも少し影響されています(笑)

餃子です! タネから作って、餃子の皮で包んで作りました。

人間の本質が垣間見られる作品です。何気ない日常においても、この映画ではそれらが顕著に表れています。その部分を拾い、自分の中に何か1つでも落とし込んで「こういうことあるよな」と、そう感じてくれたら嬉しいです。他人を覗いている主人公自体は特殊ですが、覗かれている人たちの人間性や本質を、主人公と同じ線になって覗いてくれたら面白いと思います。


【見津 賢:プロフィール】

見津 賢  Mitsu Satoshi


【作品紹介】

江戸川乱歩没後60周年記念作品 RAMPO WORLD

映画『白昼夢』

10 月31 日(金) シネマート新宿、池袋シネマ・ロサ他 ロードショー

日本を代表する小説家・江戸川乱歩の幻想的な掌編を原案に、現代を舞台に映画化。
病癖を持つ男が覗き見た、ある夫妻の秘密。甘美で恐ろしい日常が、さらけ出される―。

本格推理小説や怪奇・幻想小説の祖として後世に名を残した作家・江戸川乱歩。数々の推理小説を世に送り出す一方で、 「人間椅子」「鏡地獄」など、怪奇、妄想、フェティシズム、狂気を滲ませた変格ものと称される作品も多く執筆している。本作は、1925年に「新青年」に掲載された掌編小説のひとつ「白昼夢」と 、1926年に「サンデー毎日」にて連載された推理小説「湖畔亭事件」を原案と し、脚色を加えたものとなっている。出演は、連続テレビ小説「虎に翼」やド ラマ「闇バイト家族」などに出演しさらなる活躍が期待される見津賢。そして 、主演作『SUPER HAPPY FOREVER』が昨年公開された宮田佳典。ドラマ「 若葉のころ」「3年B組金八先生」など子役からキャリアを積み活躍する上脇結 友。監督は、『心平、』の山城達郎。今年没後60年を迎える江戸川乱歩の3作 品を、「RAMPO WORLD」と題して長編映画化。晩秋の夜に、妖しくも美し い乱歩の世界へと誘う―。

塾講師の渡会には、誰にも言えないある病癖があった。それは、人前で決して見せることのない顔を覗き見た時、この上ない快感を得るというものだった。そんな渡会が済むマンションの階下に、真柄夫妻が越して来たのは今年の春のことだった。渡会は、夫妻が済む部屋に覗き穴を作り、その生活を覗き見るのが日課となっていた。妻の華恵は大学の准教授となり出世する一方で、夫の太郎は非常勤講師として働いているようだが、夫婦仲は悪くないようだった。しかしある日、渡会がいつものように階下の様子を覗き見る中で、華恵が知らない太郎の秘密を知ってしまう―。

監督:山城達郎
脚本:川﨑龍太
出演:見津賢 上脇結友 宮田佳典 / ほたる 川瀬陽太 佐々江天真 月石しのぶ 前田龍平 田川恵美子 小川沙羅 小野寛幸 大迫一平
原案:「白昼夢」「「湖畔亭事件」江戸川乱歩
製作:BBB/ニューセレクト
配給:アルバトロス・フィルム 2025 年/日本映画/日本語/75江戸川乱歩没後60周年記念作品 RAMPO WORLD分/ビスタ/R15+
©2025「白昼夢」パートナーズ

HP: https://hakuchumu-movie.com/
公式X:@RAMPOWORLD
公式Instagram:@rampoworld

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事