7月5日(金)~14日(日)まで、東京芸術劇場シアターウエストにて上演される舞台『神話、夜の果ての』。「カルト宗教とその施設で育つ子どもたちの物語」である本作は、舞台『アトムが来た日』や映画『新聞記者』などの作品で注目を集める劇作家・演出家の詩森ろばが脚本・演出を手掛けた、繊細な心理描写と重厚さを併せもつ作品。 本作でヒロイン・シズル役として出演するのが、オダギリジョー監督映画 『ある船頭の話』のヒロイン・少女役やNHKドラマ『「仮想儀礼」』など、硬派な作品への出演が続くなど、感性を揺さぶる演技で評判の若手実力派女優・川島鈴遥。本格的には初めてとなる舞台で、演者としての才能を改めて証明する舞台となるはずだ。全力で芝居に向き合う彼女の本作へかける意気込みのほか、役者を離れた等身大の素顔にも迫ります。
本格的な舞台出演は初めてだそうですね.。現在の率直な気持ちを聞かせてください。
ずっと緊張していて、夜も眠れてないです(笑)。本格的な舞台は初めてになるので、不安もあります。
舞台への出演が決まってからどなたかに相談はされたのでしょうか。
先輩方の舞台を何度か観に行かせてもらったのですが、その度に「私にできるのかな」とかえって不安が芽生えてしまいました(笑)。今回、一緒に出演する方にもいろいろ話を伺ったのですが、みなさん共通してアドバイスをしてくれたのは「とにかく楽しむことが一番だよ」でした。稽古中はもがき悩みながら突き進むだろうけど、本番が始まったら役者それぞれのものになるから、相手も自分も信じて演じるだけ。最後に、「楽しかった!」で終われたら良いんだよ、と言われました。だから、私もその気持ちに達するまでこの舞台に向き合いたいと思います。
今回の作品は、「宗教」がテーマでもあり演じる上でも難しい作品との印象です。
映像作品やドキュメンタリー作品のほか、関連する本も読みました。簡単に触れて良いことではないですし、いくら勉強しても決して分かった気になってはいけないことだと理解をしつつ、それでもしっかり勉強して、役づくりに取り組みたいです。物語ではありますが、舞台上で実際に起こるできごとなので、そこの真実性は大切しよう、と出演者同士でも話をしています。
脚本を書かれた詩森ろばさんとは、作品や演じる役について何か話をされましたか。
ビジュアル撮影の時に初めてお話をさせていただいたのですが、「シズルは前を向いて強く生きている子だから、ビジュアルも上を向いたカットにしたい」と仰っていたんです。台本を読んで私が思っていた「シズル」のイメージと同じだったので、その言葉で安心することができ、稽古に臨むことができました。
舞台稽古が始まってからは、ベースとなる脚本の解釈やなぜこのシーンが必要なのかについてはお話しさせていただき、それ以降は各々役者が構築していく流れで取り組んでいます。
現場の雰囲気はいかがでしょうか。
現場にはとても良い緊張感があります。通し稽古の始まる1分前には、舞台そでに立って準備するんですが、その時に流れる音楽が、さらに緊張感を煽る音楽なんです(笑)。多分、観ている方にも、その緊張と怖さが伝わるような音楽だと思います。その分、最初から舞台にのめり込めるようにも考えられているんだと思います。
9日間11公演ある舞台です。体力もかなり求められるかと思います。
体力には自信があります! ただ気を張り過ぎてしまい、夜に眠れなくなってしまうことがあるんです。公演中はきちんと睡眠が取れるようにケアしないといけないとは思っています。最近、私のスマホの検索履歴が「睡眠」「よく寝るには」「よく眠れる音楽」とか、そういうワードばかりになっています(笑)
夜公演のあった翌日が昼公演な日もあるので、しっかり睡眠を取りたいですよね。何か良い寝つき方法は見つかりましたか。
まだ見つかっていないんです(笑)。でもストレッチとかマッサージとか、あと匂い、アロマ系のスプレーを掛けて寝るようにしています。眠れなくても、少しでも体が休まるようにできたらと思っています。
あと共演する方々にも、寝られない時はどうやって寝ていますか、と尋ねてみたんです。そしたら、「いや、オレも寝られてなくて……」と言われてしまいました(笑)。みんな眠れていないくらいなので、舞台経験の浅い私は仕方ないのかなとも思い始めています(笑)
今回の舞台、ご家族の方も観に来られるのでしょうか。
はい(笑)
どの公演に来られるかも知っているんですか。
はい。だから、ものすごく緊張すると思います(笑)
どなたが来られるのですか。
母と祖母と弟が来てくれます。本当に緊張するので、舞台から見えにくい席に居て欲しいです(笑)
家族のみなさんも緊張しながら観ているかも知れませんね。
きちんとしたものを届けられるように、まだまだ高みを目指してがんばりたいと思います!
観終わった後、お客さんにはどういった気持ちになってもらえたらと思いますか。
観た方それぞれが生きてきた環境で、どう感じるかがまったく違う作品だと思うんです。だからこそ、何かを受け取って欲しいというよりも、演じることでお客さんに「提示」する作品だと思っています。私たちはこの世界でどうしていくべきなのか、私たちはもっと繋がっているべきなのか、そういった「提示」をしたいと思います。ただひたすらに「提示」することで、観客一人ひとりに感じてもらいたいです。みなさんがどういった反応をされるのかは、とても気になりますね。
今回の舞台公演がすべて終わって振り返った時、どんな自分に成長できていると期待していますか。
ここで勝負しないといけない、と私は考えてしまう方で、変に自分で自分にプレッシャーを与えてしまうことがあるんです。ただ今回は、一発勝負のようなことではなく、すべてが地続きで繋がっているものだと感じています。プレッシャーがあっても楽しみながらできる気持ちを最後まで持ち続けられたら良いですね。仮に舞台上で間違えるようなことがあっても、柔軟に乗り越えられるような、ある意味、少し余白がある余裕をもったお芝居ができたらと考えています。そういったことの積み重ねが自信になっていくような、その指標を自分に持てるきっかけの舞台にできたらと思います。
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お仕事以外のプライベートについても聞かせてください。最近、何かにハマっていることはありますか。
もともと匂いフェチなところがあるんですが、最近は忙しくてなかなか自分が求めている匂いを追い切れていなかったんです(笑)。部屋のフレグランスを変えずに生活していたのですが、また安らげる空間にしたいと思い、部屋にある香りを全部変えました。
朝起きて、良い匂いがすると気分も上がりますね。
あと、舞台稽古もあって香水も付けるのを止めていたんですが、気分も上がるならと思って付けてみたんです。やってみるとシュッとしたときに気合いが入る気がして、とても良かったんです。自分の好きな匂いを見つけるのって素敵だなと思いますね。
今現在、気分を上げてくれている匂いはどんな匂いですか。
前はキンモクセイだったんですけど、今はウッド系の匂いに変えました。「mou mou」というブランドのウッド系に匂いがほかのウッド系の匂いとは違って、優しい匂いで、すごく心が安らぐんです。延々とその匂いを嗅いでいられます♪
舞台の稽古も大変な中、気分を自分で変えられる方法を知っているのは良いことですよね。ほかに何かハマっていることはありますか。
話すのが恥ずかしいんですけど、実は「詩」や「エッセイ」を書くことにハマっているんです(笑)
どこにも披露はしていないものですか。
はい、誰にも見せてはいないものです(笑)。心の内を書いているんです。バーッとなぐり書きして、それをまたまとめて「詩」にしてみたり。いま私、こう思っていたんだ、とうまく言葉にならないことは書き出すと意外と出てきたりするので、大切だなと感じています。今の自分を見つめる時間にもなっていると思います。
書いてみて初めて気づく、気持ちの現在地を知ることができますよね。
今後、目指していきたい俳優像がありましたら、教えてください。
映画など映像作品に出たいと思って俳優の仕事をしてきたのですが、今回の舞台を経験して、幅広く、視野も広くもって、新しいことに挑戦して、どんどん大きな自分になれたらと思います。
ありがとうございます。では最後に、舞台を観に来てくれる方々へメッセージをお願いします。
「宗教」がテーマの作品だと少し重く感じられる方もいるかも知れませんが、ユーモアもありつつ、観た人の心に突き刺さるような作品です。劇場から出た後には、きっと足取りも軽く感じられることと思いますし、大切な人に連絡してみようとも思えるような作品ではと感じています。ぜひ気軽に劇場に足を運んでもらえたらと思います。
【舞台情報】
2024年7月5日(金)~14日(日)
東京芸術劇場シアターウエスト
『神話、夜の果ての』
青年は目を覚ますと、拘置所にいた。自分がなぜここにいるのか、自分が誰なのかさえ青年はわからない。そばにいるのは、精神科医 。刑務官。そして 夜な夜なあらわれる夢とも現実ともわからない少女である。
ある日、精神科医の元を弁護士が訪ねてくる。国選で青年の弁護士となった彼は、いまだ、青年に面会することもできていない。
5人の会話は迷走し、もつれ、記憶と現在と精神を行ったり来たりしながら、青年の苦しみの原因と、結果犯してしまった犯罪のかたちが浮かび上がる。
<キャスト>
坂本慶介 川島鈴遥 田中 亨 杉木隆幸
廣川三憲
作・演出 詩森ろば
<公演日程>
2024年7月05日(金)19:00(初日割)
06日(土) 14:00
07日(日) 14:00★
08日(月) 休演日
09日(火) 19:00
10日(水) 14:00/19:00
11日(木) 14:00★
12日(金) 19:00
13日(土) 14:00/18:30
14日(日) 14:00 ※受付開始 60分前 開場 30分前
※7月8日は休演日
※★の回7月7日14時、11日14時 演出家とゲストによるアフタートーク有り
<チケット発売情報>
全席指定
●一般6,000円(前売・当日共)
●初日割 5500円(前売・当日共)
●U25 3,000円 (前売のみ・一公演限定10枚)
●障害 3,000円(前売・当日共)
※U25、障害は劇団のみの取扱い
※U25は年齢確認のできる身分証、障害は手帳を受付にて提示
公式ホームページ
劇場公式X
【プロフィール】
川島鈴遥 Ririka Kawashima
川島鈴遥(かわしま・りりか)。2002年生まれ。栃木県出身。150cm。趣味:歌うこと、詩を書くこと。 2010年、テレビドラマ『特上カバチ!!』でデビュー。以降大河ドラマ『八重の桜』などに出演し、幼い頃から女優として活躍。2019 年に公開された、オダギリジョー初監督長編映画 『ある船頭の話』でヒロインを演じ、第 34 回高崎映画祭最優秀新人女優賞を受賞。2022年公開映画『ぜんぶ、ボクのせい』(松本優作監督)ではヒロインを務め鮮烈な印象を残す。2023 年放送 NHK「仮想儀礼」に出演するなどドラマ・映画問わず活躍中。
公式インスタグラム @ririka.kawashima__official
公式サイト