映画『思い立っても凶日』が、下北沢・K2シネマの今年K2で観てもっとも見逃してほしくないと感じた作品「年末シネマ」に選出。初プロデュース作品にして、映画ツウからの高評価を得た田村魁成さん27歳。作品も年間ベストシネマ作品として、12月13日(金)から下北沢・K2シネマで再上映。プロデュースに加え自らも主演として作り上げた本作、表と裏の両面で奮闘したエピソードをはじめ、田村さんの今後の展望なども紹介します。

もともと映画を作りたい気持ちがずっとあり、自主製作の映画を中心に役者として出演していました。そういった中で、監督の野本梢さんが手掛けた映画でご一緒させていただくことがあり、その作品後に私から今回の映画製作について依頼をさせていただきました。

もともとのお願いが1〜2日で撮影できる短編作品のつもりでいたんです。そのせいもあり、野本さんに依頼を受けていただきました。

1つだけ、観終わった人が暗い気持ちになるのではなく、明るい気持ちになれる作品にしてほしい、とお伝えしました。

野本さんがお話しされていたのは「田村さんと一緒に作るのであれば、田村さんにしかできないことをしたいし、それを踏まえて最後、明るい気持ちになれる作品にしたい」と言っていただきました。

もちろん期待させていただいた通りのものでした。その初稿から野本さんと二人でディスカッションを重ねながら、最終的な脚本ができあがりました。

野本さんとお話して、出来上がった脚本のイメージをもとに、俳優さんにお声をかけました。「横山未生」役の村上由規乃さんと「高山秋保」役の田中なつさんには、野本さんを通してオファーをさせていただきました。

いざ撮影が始まると記憶が無くなるほど何もかも忙しかったですね(笑)。演じる方で思った以上に大変だったのは、「誠」が「未生」に電話越しに喜ぶシーンで、繋がっていない電話で喜びを表現することです。製作で体が疲れ切っているにも関わらず、演者としてのシーンでは、突如「喜び」を表現することに。そこはなかなか難しくて時間を掛けて撮影をしたことを覚えています。あとは、一つひとつのシーンを野本さんに確認をしながら、時にはディスカッションをしながら撮影できたこともあり、とても贅沢な現場だったなと思っています。

でも多くの方に支えてもらって作れたので、人に感謝しかないですね。今回、製作側としては最後の責任を持つ立場であり、演じる側では主演をさせていただきました。その両面を1つの作品で体験できたことは、本当に貴重な経験でした。同時に、自信にも繋がりました。「映画を作ることがこんなにも大変なことなんだ」「こんなにいろいろな人が頭を悩ませて作っているんだ」、と考えられたことは大きかったです。僕がこれから役者として関わる作品にも、脚本に対して1年をかけて書き上げた人がいることや、衣装を考えてくれる人がいることなど、身に染みて感じることができ、芝居をすることの責任がより大きく感じられるようになりました。関わる人たちの背景が加わることで役者としても成長できた機会になりました。

本作は、「過去の良くなかったことや凶日を再解釈する」作品だと思います。過去への気持ちを捉え直すことで、心が軽くなれる映画でもあります。そういった気持ちの支えに、この作品がなれたら嬉しいですね。

「田上誠」役:田村魁成

>>https://k2-cinema.com/event/title/430

年間の上映作品の中から、1番の作品に選んでいただけたことは、”奇跡”だと思っています(笑)。もう一度、映画館で上映していただけることが貴重なことですし、とても嬉しいです。

「K2」での上映が終わると、名古屋のシネマスコーレでの上映が決まっています。それが終わるとまた幾つかの映画館で上映していただくお話や、イベントでの上映などのお話もいただいています。また最終的にはいつか配信でも観ていただける作品にできたらと思っています。

「横山未生」役:村上由規乃
「高山秋保」役:田中なつ

もともと教師になろうと考えていたんです。でも教育実習などを経験していくうちに、教師という仕事を一生の仕事にしていくことに自信が持てなくなってしまったんです。自分の本当にやりたいことは何だろうと考えた時に、やはりテレビなど表に出るようなことをしたいと思うようになりました。そこから、いろいろなジャンルの表に出る仕事を試してみました。YouTubeをはじめてみたり、コンビを組んで芸人として地下ライブに出てみたり。ある時、養成所のオーディションだったのですが、演技に触れる機会があったんです。「演じること=楽しかった経験」をしたことで、そのまま養成所に入り、1年間みっちり演技の勉強をしました。養成所の卒業と同時に、地元の大阪を離れて東京へ上京しました。

小栗康平監督の『泥の河』です。作品の中で登場する主人公の子供が、ぜんぜん芝居らしい芝居ではなかったんです。ただそこにいる感じがしていました。調べてみると、監督がその子供と2か月くらい一緒に生活をしていたエピソードを知ったんです。本当に力みのないラフな状況を作って撮られた作品です。自分が目指している芝居像も、そこに近いものがあると思っています。
もうひとつは『竜二』です。こちらも古い作品で、金子正次さんが脚本と主演をし、プロデュースされた作品です。初公開から40年経っている作品ですが、いまだにファンの方が多くいて、リバイバル上映も2023年にされています。実は、金子正次さんは、当時上映した直後に亡くなられています。それもあって、映画のように残るものはすごいなと改めて感じさせてくれた作品です。当時はまだフィルム撮影だったので、今以上にお金も労力も大変なことだったと思います。そのバイタリティのすごさもそうですし、作品自体もとても面白い作品です。情熱をかけた作品が今も残っていて、またファンもいる、それがすごいことだと思うんです。羨ましく思いますし、自分もそういった作品をいつか作ってみたいと思います。こういう人になりたい、作品像としては『竜二』は大きな影響を与えてくれたました。

ありがとうございます(笑)。今の時代は誰もが作品を作れる良い時代なので、ぜひ面白い作品をみなさんも作って、たくさんの良い作品が残っていけばと思っています。

今は演じることは続けながらも配給会社でも働いています。理由は、作品を面白く作れる人はたくさんいると思うんですが、その届け方、お客さんに観てもらう大変さを、今回の作品でより実感しました。そこをきちんと勉強して、いろいろな作品に生かせるようになりたいと考えています。次の作品では、より大きな規模で、より多くの人に観てもらえるよう頑張りたいと思います。今、27歳なので30歳までにまたひとつ、大きなことができたらといいですね。お客さんに観てもらうまでの届け方もしっかり勉強する、今はその準備段階だと思っています。

映画館へ出かけて映画を観ることが、今の時代、とても特別で大きなことだと思うんです。ぜひ気負わずに観に来てほしいです。作品を観てもらって、楽しんで帰ってもらえたら嬉しいです。


【映画情報】

2024年12月13日(金)〜 終了未定 

『思い立っても凶日』

K2月額会員が選ぶ、今年K2で観てもっとも見逃してほしくないと感じた作品「年末シネマ」に選出

<ストーリー>
誠が高校生のとき、ひょんなことからキャプテンの未生(みお)に頼まれ、女子フットサル部の引退試合の記録係を手伝うことになった。
そのときの未生の采配によって、試合に出られずに悔しい思いをしていた秋保に誠は励ましの言葉をかけるものの、未生に遮られ秋保とは微妙な空気のまま別れてしまう。誠にとって「凶日」であった。卒業してからも彼女を想い続けていたのだが、街で彼氏らしき男性といるのを目撃してしまい、"秋保奪還計画"と題して特技を活かした謎のトレーニングに励む誠。そんな盲目な誠が未生をはじめ周りの人物に現実を突きつけられていく中で、あの「凶日」の記憶が自分の中で書き換えられたものだったことに気づく。
秋保を励ます言葉が未生を傷つけ、未生の采配が秋保を傷つけ、二人もまた、あの「凶日」を引きずりながら過ごしていた。誠・未生・秋保は互いにあの日を乗り越えるべく、模索をしていく。

<キャスト>
田村魁成 村上由規乃 田中なつ
吉川流光 榎本桜 藤主税 三浦健人 村松和輝 大﨑章 南久松真奈 田野真悠 三好紗椰 藤公太 蔦陽子 窪田翔 小川富行 小島彩乃 伊藤由紀 とうふ

<製作>
監督・脚本 野本梢
撮影・照明 野口高遠 録音 横田彰文 撮影助手 金子愛奈 制作 小松豊生 ヘアメイク 子池絢音 スチール 中川達也 メイキング 岡野祐介 ryota hakamada 整音 久保琢也 音楽 IX 企画・プロデュース 田村魁成 アソシエイトプロデューサー 吉川流光 宣伝デザイン 東かほり 協力 ニューシネマワークショップ bar poduti
(2023/49分)

<上映スケジュール>
東京:シモキタ-エキマエ-シネマ K2
   2024年12月13日(金)〜終了未定
名古屋:シネマスコーレ
   2025年1月11日(土)、12日(日)、18日(土)、19日(日)

公式サイト
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【プロフィール】

田村魁成 Tamura Kaisei

田村魁成(たむら・かいせい)。1997生まれ。大阪府出身。大学卒業後、役者を始める。特徴的な顔立ちから、何かに困っていたり、不幸になる役が多い。プロデュースとしては、本作のほか『晴れときどき、雨ときどき』(小池匠監督)出演も映画に限らず、舞台、CM、MVと多数。TVCM『クラフトボスソイラテ失恋篇』『Sales hub』『リクルートエージェント 転職に詳しい人篇』ドラマ『おいハンサム!! season2』『舟を編む〜私、辞書つくります〜』など。
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