
圧倒的な表現力で「姉妹」「自己肯定」の大切さを繊細かつ熱く演じています。
森田想との共演で相乗する“心の機微”を描いた優作です!
公開中の映画『いろは』で、主人公「時田伊呂波」役を演じる川島鈴遥へのインタビュー。うまくいかない自分とは対照的に、思うがまま自由に生きる姉「花蓮」(森田想)。不意な旅を通じて見えてくる姉の姿を、繊細さと大胆さをあわせ持った川島鈴遥の表現力で、観ている人の心を鷲掴みにする作品です。一滴の水のような感情が、川となり大河となり、やがて広く澄み渡った海へと辿り着く。そんな気持ちにさせてくれる川島鈴遥の表現ひとつひとつを堪能できる作品です。
PHOTO:望月宏樹
TEXT:kukka編集部
演じられた「時田伊呂波」の人物像をどのように捉えられていましたか。
台本を読んで、すごく内に籠っていて、いろいろなことに苛立ち、鬱憤が溜まってしまう。そして、人にも馴染めないので、自分の殻に閉じ籠もるような子を想像していました。ただ、森田さんとお芝居をしていく中で、私自身の持っている強さが表れている瞬間があったように思います。内気な感じで演じていたつもりが、実はそうではなかったんだなと、できあがった作品を観て気がつくこともありました。現場で撮影が進んでいくにつれて、「伊呂波」という人間ができあがっていった感覚がありました。
物語が進むにつれて、「伊呂波」の自我をより濃く画面越しに垣間見ることができました。
初号試写では観ていたのですが、実は公開初日にこっそり劇場に観に行きました。その時に「伊呂波」をこう演じようという芝居ではなく、歩き方や手の仕草、貧乏ゆすり、そういった動きまでが、体現できていたことを確認できました。
観客と同じ目線で観ることで、改めての気づきがあったのですね。
「伊呂波」がさまざまな人と関わっていくなかで、特に第一の男、第二の男、第三の男に対して、見せる顔が変わっていくんです。そういった変化も、うまく出せているなと感じました。意図的に変えようと意識はしていなかったので、自然とそうなるように撮影の順番を組み立ててくださったんだなと、監督には感謝しています。ひとつの決まった人物像ではなく、「伊呂波」のいろいろな顔、多面性を見せられる像を表現できたことに、試写を観て安心しました。
撮影は佐世保中心だったのでしょうか。
映画の中のふたりと同じように、佐世保、長崎、雲仙、諫早と4か所を巡って撮影をしました。それぞれの町の空気を感じながらの撮影でした。
横尾監督が長崎出身ということもあって、とても美しい風景が映像にも反映されていました。
姉妹がいろいろな人たちと関わり合う、その合間に差し込まれている風景やドローンで撮影した映像が、とても綺麗なんです。映画を観て、改めて長崎って素敵な場所だなと思いました。



撮影はどれくらいの期間で撮られたのでしょうか。
およそ2週間だったかなと思います。
長崎を堪能されたことかと思いますが、川島さん的長崎のおすすめポイントを教えてください。
長崎市内にいて観光地を周るのも、もちろん良いのですが、おすすめは佐世保の商店街です。栄えているところもあれば、少し古びたところもあって、そのコントラストがとても心地良かったです。安心して、息ができる町に身を置いている感覚に包まれていました。あと、雲仙の海がとても綺麗でそこもおすすめです。「伊呂波」を通して、いろいろな場所が登場するので、長崎の町の良さを映画と一緒に知ってもらえると嬉しいです。
横尾監督とは2作品目となりますが、監督の印象を聞かせてください。
とにかく明るい方で(笑)。エネルギーを与えてくださる人だと思います。横尾さん自身もそうですし、横尾さんの周りも常に笑顔が絶えないんです。横尾さんが常に明るいので、現場のみんなの気持ちも高いまま、最後まで突っ走れることができました。
監督から「伊呂波」役に関して、言われたことで印象に残っていることはありますか。
撮影の前、私に「キラキラオーラがあるから、それを消してほしい」と言われました(笑)。川島鈴遥の顔と「伊呂波」の顔はまったく違うオーラなので、川島鈴遥が出てしまうと、この作品が成立しないかもとの懸念が監督にはあったようです。「伊呂波」役に決まった後の初顔合わせの時、その言葉を言われました。現場で監督に言われたことは、そこだけでした。「リリー、いまキラキラが出ているよ」と(笑)
監督に「リリー」と呼ばれているんですね。
そうなんです(笑)。撮影中は、自分でもバランスを調整しながら「伊呂波」を演じていました。変化があったのは、撮影3日目くらいに佐世保で、家の中から外を見つめるシーンを撮った時です。「伊呂波」なら、きっとこんな風に思うだろうな、と実感できる瞬間があり、手応えを持つことができました。その頃を境に、監督からは「とにかく感情を思うままに出してほしい」と言われるようになりました。
それらも踏まえて、川島さんがぜひ見てもらいたいシーンはどちらでしょうか。
森田さん演じる姉「花蓮」との関係性が少しずつ変わる瞬間を、観ている方にキャッチしてもらいたいです。第二の男と会った後に、二人して顔にパックをするシーンがあるんです。そのシーンはすごく姉妹らしくて、「この二人、もともとはこんな風に喋っていたんだろうな」と、「花蓮」らしさも「伊呂波」らしさも感じられるシーンです。それぞれの強さも弱さも、すごく繊細に、でも柔らかく表現されていて、お気に入りのシーンでもあります。そこから変化していく関係性に注目しながら観てほしいです。
2回、観たくなる作品ですね。
そうなんです(笑)。私も二回目に観た時に、姉の「花蓮」がちょっとした瞬間に「伊呂波」の顔色を伺ってみたり、心配する素振りに気づいたんです。「花蓮」も弱さを抱えながら、「伊呂波」の様子を伺いつつ旅をする姿が垣間見えて、なんて素敵な姉妹なんだろうと感じました。お互いがお互いを思いやる姉妹。チグハグではあるけれど、素晴らしい関係性だなと思いました。



川島さん自身は、この姉妹の関係性を何かから参考にされたのでしょうか。
私に姉はいないのですが、1歳上のいとこがいます。お姉ちゃん的な存在だったので、小学生の頃は一緒に過ごして、いつも後ろを追いかけていました。今回は、その当時の気持ちを自分の中から、引っ張ってきた部分もあります。実際には長女なので、「しっかり者でいないといけない」気持ちはどこかにあって、もう少し甘えたいだとか、下の子が羨ましいみたいな気持ちを持っていた時期もありました。その両方の気持ちを大事にすることで「伊呂波」の妹像ができあがったのかな、と今振り返って感じています。
自分の家族、きょうだいについて、改めて考える機会となるとも感じました。
本当にそう思います。先行公開した長崎の劇場へ舞台挨拶に行った時に、「自分のことのようだった」と観た方に仰っていただくことが多くありました。姉妹や兄弟がいらっしゃらなくても、きょうだいを持つ親となった時に、子どもは「花蓮」「伊呂波」のように切ない気持ちを抱えているのかもしれない、と思うこともできるかと思います。いろいろな世代に刺さる映画になっていると思います。
作品名が「いろは」な理由を聞かれていますか。
監督から伺いました。今の子どもたちは、自己肯定感の低い子が多く、その子たちに「大丈夫だよ」と言ってあげられるような映画を作りたい、その気持ちから生まれた作品です。そこに気づく始まりの物語との理由で、主人公の名前を「いろはにほへと」の「いろは」から名付けられたそうです。
劇中、「伊呂波」はよくラジオを聴いていましたが、川島さんはラジオを聴かれますか。
最近、聴くようになりました。
ちなみにどんな番組を聴かれているのでしょうか。
芝居論や映画論を語っているラジオ番組のほか、リリー・フランキーさんの「スナック ラジオ」も聴いています。
演技と真逆の番組ですね(笑)
気持ちを緩めたい時にぴったりのラジオ番組です(笑)。リリーさんの声を聴くと、波長的にとても落ち着けるんです。



作品以外の話も聞かせてください。
以前のインタビューでは、詩やエッセイを書きはじめるようになった、と話されていました。今も続けているのでしょうか。
続けていて、気づいたことがある時に、書くようにしています。この人のこの言葉が良かったなとか。読むことも好きなので、最近では詩やエッセイ本を買って読むようにしています。
先日は仕事終わりにマネージャーさんと二人で、土手に座って川を眺めながら一緒に詩を読む、時間がありました(笑)
マネージャーさんと土手で詩を読む……。素晴らしい関係ですね(笑)
夕日に照らされながら、素敵な時間でした(笑)
何という本を読まれていたのでしょうか。
岡野大嗣さんの『たやすみなさい』です。黒のキラキラした装丁に惹かれました。頑張らなくてもいい、といった内容の作品です。
横尾監督に、キラキラはダメと言われていたのに(笑)
封じ込めていた分、キラキラへの憧れが溢れ出てしまったのかもしれません(笑)
特に印象に残っている詩はありますか。
「ぼろぼろのからだをひきずってあしたまたぼろぼろになるためにねる」という詩です。
自分の思いを見せるみたいで恥ずかしいのですが、お芝居に一つひとつ全力で向き合い、ボロボロになって家に帰り、次の日もボロボロになるために頑張ろう、みたいな。そういう少し熱い部分が私の中にもあります(笑)
では、そんなボロボロになるほどの熱い思いで取り組んだ映画『いろは』を観てくれる方へ、川島さんからメッセージをお願いします。
最近「人生は競争じゃない」と自分に言い聞かせているんです。ゆっくり歩きたい人もいれば、早く走りたい人も、休憩したい人もいると思います。周りの人を見て焦り、時には周りが敵に見えてしまう瞬間もあるかもしれません。でも、「伊呂波」「花蓮」の姉妹ではないですが、誰にでも常に無条件で支えてくれる人がいると思います。この映画を観て、その観てくださったみなさんの心に優しく光が射してくれたら嬉しいです。

【映画情報】
公開中
映画『いろは』

自主性ゼロ。自己主張ナシ。お姉ちゃんが大嫌い。自分のことが大嫌い。
姉の帰省をきっかけに動き出す姉妹の物語。
<キャスト>
川島鈴遥 森田想
遠藤健慎 山口森広 田川隼嗣 石本愛 長崎亭キヨちゃんぽん
田中明日実 石長由紀子 明石純美玲 吉田ひかる 小宮みどり 宮崎裕子 加々良宗澄 井上真緒 中⼭祐太 若杉康平
金子大地(声の出演)
遠藤久美子 鶴田真由
監督:横尾初喜
脚本:藤井香織
音楽:上田壮一
製作:BLUE .MOUNTAIN
配給:BLUE .MOUNTAIN / LUDIQUE
助成:⽂化庁
©2026 BLUE.MOUNTAIN
2026年|日本|カラー|アメリカンビスタ|5.1ch|94分
公式HP:http://iroha2026.com
公式X:@blue_mountain_7
公式Instagram:@blue.mountain_inc







【プロフィール】
川島鈴遥

川島鈴遥(かわしま・りりか)。2002年3月17日生まれ。栃木県出身。身長:150cm。特技:歌うこと。レプロエンタテインメント所属。
2010年、ドラマ『特上カバチ!!』でデビュー。以降、大河ドラマ「八重の桜」、Huluオリジナル連続ドラマ「フジコ」などに出演し、幼いころから女優として活躍。2019年、オダギリジョーの初の長編映画監督作品『ある船頭の話』でヒロインに抜擢され、第34回高崎映画祭最優秀新人女優賞を受賞。
近年の出演作に、映画『ぜんぶ、ボクのせい』(2022/松本優作監督)のヒロイン詩織役、「死刑にいたる病』(2022/白石和彌監督)、『遺書、公開。』(2025/英勉監督)、ドラマ「略奪奪婚」(2026/TX)、「シリウスの反証」(2026/WOWOW)、「仮想儀礼」(2023/NHK BSプレミアム)など、話題作への出演で着実にキャリアを重ねる若手実力派。
公式Instagram:@ririka.kawashima__official
公式サイト:https://www.lespros.co.jp/artists/ririka-kawashima/
