
お笑い芸人として活躍するゆりやんレトリィバァによる初監督作品『禍禍女』が、2/6(金)から全国公開された。「スキになられたら終わり」の映画コピーの通り、猟奇的さと気味の悪さを併せ持つ主人公で美大生の「上原早苗」による恋愛ストーリー。インタビューでは、初監督に挑戦したゆりやんレトリィバァ監督と、「上原早苗」役を演じた主演の南沙良さんに、作品エピソードのほか作品への思いについてじっくり話を伺いました。ゆりやん監督の世界観を、南沙良さんがどのように演じたのか、劇場で見る前に押さえておきたい貴重なコメントです!
Photo:望月宏樹
Text:kukka編集部
映画監督に挑戦したいと思ったきっかけ、また映画に興味を持ったきっかけを教えてください。
ゆりやんレトリィバァ(以降は「ゆりやん」):『バック・トゥ・ザ・フューチャー』をきっかけに映画を好きになって、いつか私も映画に携われる仕事をしてみたいと子どもの頃から思っていました。
5歳の時に『学校の怪談』を映画館で見たのですが、その時はじめて怖い作品が好きなことに気づいたんです。大きくなってからは、スタンリー・キューブリック監督の作品『シャイニング』や、スティーヴン・キング原作の『ミザリー』とか、人が怖いとか、人がおかしくなっていく様を描いた作品を見るようになりました。それは、お笑い芸人としても影響を受けたと思います。
主演を南沙良さんでの初監督作品を撮り終えた現在、どのような手応えがありましたか。
ゆりやん:まずは映画作りが初めてな私の作品に出演していただけたことに、感謝の気持ちがあります。これまで撮影の準備や撮影、またその編集にずっと追われていたんです。すべての撮影を終えてからも、客観的に1つの作品を見る気持ちではなく、すべてが日常の延長のような感覚だったこともあり、あまり素の気持ちでは作品を見ることができなかったんです。すべての制作が終わって、映画祭でお客さんと一緒に見る機会があり、その時に初めて作品を素の気持ちでみることができました。その時の南沙良さんは「早苗」にしか見えませんでした(笑)。実物の沙良さんを思わず忘れてしまうほど、「早苗」と同一化していて、やはり沙良さんで良かったと再認識できました(笑)
南沙良(以降は「南」):あまり挑戦したことのない役柄だったので、ゆりやんさんが居なかったら、できなかった役でした。演じていても楽しかったです。


監督とのやり取りを振り返って、特に印象に残っていることを教えてください。
南:撮影の前に都度、どういうシーンにしていくのかを話ながら進めました。それがすごくやり易かったです。特にミュージカルシーンとかは、台本を読んだだけでは、どういったシーンになるのか想像がつかなかったので。ゆりやんさんから「もうちょっと、こうしたら気持ち悪く見えるよ」とか、いろいろ教えていただきながら撮りました(笑)
特に印象的だった前田旺志郎さん演じる「増村宏」を模した”口肛門”のシーンについて聞かせてください。あのシーンはどこまでが打ち合わせされて撮られたのでしょうか。
ゆりやん:、一度しか撮ることができない、一発勝負のシーンでもあったので、かなり綿密に打ち合わせをしました。何回目の動きで何をする、このタイミングで何をするなど、細かく決めて何度も練習をしてから撮影しました。


難役とも言える「早苗」役だったかと思いますが、南さんご自身は、どのシーンを見てほしい自信のあるシーンだと思われていますでしょうか。
南:これまでまったく演じたことのない役だったので、どのシーンもやり切った気持ちはあります。ただ、自信はないですね(笑)。でも、観た人がみなさん、面白がってくれたら嬉しいです。
撮影の前、いつもとは違った臨み方をされたりしたのでしょうか。
南:やったことのない表現が多い作品だったので、自分一人だとどうして良いかわからないことも多くありました。それもあって、現場で監督と話をしながら進めていきました。最初にとりあえずやってみる、というよりも話をしっかりしてから演技をすることが多かったです。
斬新で奇想天外な作品の印象ですが、その実は綿密なイメージ共有があった上での撮影だったことは意外でもあり、また面白さでもありますね。

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南さんのほかにも出演者は、各方面で活躍されているキャラクター性のある方々の印象です。ゆりやん監督の希望だったのでしょうか。
ゆりやん:希望は結構、出させていただきました。斎藤工さんは個人的に興味を持っていたんですけど、斎藤さんの方は私に興味を持っていただけなかったようなので、作品の中で酷い目に遭ってもらいました(笑)。平田淳子さんは同じ吉本興業に所属の俳優さんなのですが、お会いしたことがなかったんです。この『禍禍女』では、真っ先にお願いした方の一人です。アオイヤマダさんは『禍禍女』の動きを奇抜にするため、彼女に相談してみたいなと思ってオファーをさせていただきました。
あと子どもの「渡瀬陽一」役を演じた吉里紀汰くんはオーディションだったんです。100人以上の子にオーディションへ来てもらったのですが、彼は1グループ目のさらに1人目の子だったんです。
南:すごい!
すごいですね!
ゆりやん:みなさん、可愛らしくてお芝居も素晴らしい子役の方ばかりだったんです。オーディションは何人かの子が1つのグループになって、お芝居をしてもらっていたんです。紀汰くんのグループがすべて終え、最後の挨拶をした時に、「(オーディションに)僕が受かった!」と彼が言ったんです(笑)。その言葉で、心奪われてしまって、紀汰くんがしたいと思わされてしまいました(笑)
子どもらしい子どもだったんですね(笑)
ゆりやん:周りの子のお芝居を見て、自分が受かったと確信したみたいです。
南:おもしろい(笑)
南さんも、ハリウッド作品などオーディションの機会があった際には、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか(笑)
南:一度、検討します(笑)
ゆりやん:ぜひ言った方が良いと思いますよ♫
ゆりやん監督の第2作品目のアイデアはすでにあるのでしょうか。
ゆりやん:はい! 『国宝2』を撮りたいと思います。
『国宝2』(笑)
ゆりやん:『国宝2』ではなく『国宝通』、『国宝』に詳しい人の作品です。
南:(笑)
ゆりやん:『国宝』ファンの方を撮る作品です♫
楽しみにしています(笑)


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公開後の反応も楽しみですね。
ゆりやん:宣伝のため、全国行脚をさせていただきました。名古屋から始まって、京都、大阪、奈良、広島、福岡のほか、仙台や北海道まで。『禍禍女』のラッピングをした宣伝カー「禍禍CAR(マガマガカー)」を用意していただいたので、各地で選挙みたいな街頭演説をしました。
宣伝やPRを自身でされてみて、新たな気づきもあったのでしょうか。
ゆりやん:そういったPRの時や街頭演説をする時、人前で大きな声を出すのが恥ずかしくないので、芸人をやっていて良かったなと思いました。こういったことが恥ずかしいと思っていたら、毎回毎回、恥ずかしいと思いながらで大変だったと思います(笑)
南さんは、大勢の前で話す機会は、舞台挨拶の時とかくらいででしょうか。
南:そうですね、あまりないですね。
ゆりやん:知らない人たちの前で、「どうやったら、両思いになるんだ!!教えろ!!」とか「なんや、そこ手を繋ぎながら聞いているみたいだけど〜」とか叫んでいました。
南:(笑)
いきなり大きな声を出せるのは、さすが芸人さんですね(笑)


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劇中に映り込む造形物がインパクトのあるものばかりでした。ゆりやん監督の意向はどこまで反映されたものだったのでしょうか。
ゆりやん:“口肛門”にしても、話し合いながらイメージを膨らませることは難しいと思うので、いろいろと私のイメージを聞き取っていただきました。口の中を滑り台のように滑る「宏」の大きな顔があったら良いなと思っていたんです。ただ物理的なスペースの問題や安全確保の面でも実現が難しくなった時に、「どうしても“口肛門”を作りたい気持ちをお伝えしたんです。平面だったらできるのかどうかとか、肛門ぽくするにはどういう素材が良いだとか、体が口の中に入った時にヌルっと滑り込むような感じにして欲しいとか、いろいろなお願いしました。ただすごいのは、そのイメージの通りに実際の造形物を表現してくださたんです。だから毎回毎回、出来上がったものを見に現場へ行くことが楽しみでした。
すべてを作品に映すことは出来ないのですが、本当に細かなところまでも面白く作られいたんです。たとえ映っていなくても、「早苗」はこういう人なんだと、その気味悪い世界観をしっかり作ってくれたことに感動しましたし、とても嬉しかったです。
作品から「禍々しさ」が表現されているのが、見ていて伝わりました。
ゆりやん:もとは何もない場所も、装飾していただくことで、作品の世界が表現されていたと思います。
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南さんへ質問です。本作への出演で一番良かったと感じられたのは、どういった点でしょうか。
南:やはりこの役柄ですね。普段だとやることのない作品だと思うんです。今回、本当にできて良かったなと思います。今後の自分の表現にも繋がっていくと感じていますし、やって良かったなと改めて思います。
では最後に、劇場で見てくれる方々へメッセージをお願いします。
ゆりやん:芸人が監督を務めた作品としてではなく、純粋に作品を楽しんでもらえたら嬉しいです。伏線をめっちゃ貼っているように見えて、実はただばら撒いているところもある作品です(笑)。「あれに気づいた?」とか見終わった後で友だちと会話をしてもらえると嬉しいです。感想を話し合うのが楽しい作品だと思うので、一人よりも大勢の方と映画館へ行ってもらえたらと思います。
南:お芝居をしていてもそうでしたが、完成したものを見ても、すごくエネルギーのある作品だと感じましたし、満足感の高い作品だと思います。私が映画館へ行ったなら、映画を見ながら食べようと思って買ったポップコーンを食べずに見終わってしまうと思います(笑)。食べるのをつい忘れてしまい、作品が終わってしまいそうです。そのくらい目が離せない作品です。ぜひみなさんも楽しんでもらえたら嬉しいです。

【プロフィール】
ゆりやんレトリィバァ Yuriyan Retriever

1990年11月1日生まれ、奈良県出身。関西大学文学部卒業。大学在学中の2012年に吉本興業NSCに35期生として入学。「NSC大ライブ2013」で優勝し、首席で卒業する。2017年、女芸人No.1決定戦「THE W」第1回大会で優勝。2019年にはアメリカのオーディション番組『アメリカズ・ゴット・タレント』に挑戦し、大きな注目を集める。2021年、R-1グランプリ優勝。Netflixドラマ『極悪女王』で主演を務めるなど、女優としても活躍の場を広げ、その他にもアーティスト活動や、トレーニングウェア「YURYUR(ユーユー)」のディレクションなど幅広く活躍中。2024年に活動拠点をアメリカに移す。
公式Instagram:@yuriyan.retriever
公式X:@notinu
公式Tik Tok:@yuriyan.retriever0
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南 沙良 Minami Sara

南沙良(みなみ・さら)。2002年6月11日生まれ。東京都出身。
三島有紀子監督作品『幼な子われらに生まれ』(17)で俳優デビュー。初主演映画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』(18)の演技力が高く評価され、報知映画賞、ブルーリボン賞ほか、数々の映画賞を受賞する。これまでの主な出演作に、『この子は邪悪』(22)、「ドラゴン桜」(21・TBS)、「鎌倉殿の13人」(22・NHK)、「光る君へ」(24・NHK)、『愛されなくても別に』(25)など。今年に入り、『万事快調〈オール・グリーンズ〉』(26)では主演を務め、香港映画『殺手#4』(キラー・ナンバー4)は4月3日、『マジカル・シークレット・ツアー』は6月19日に、それぞれ全国公開待機中。
公式Instagram:@lespros_sara00
公式X:@lespros_sara
オフィシャルファンクラブ:https://sara-minami.com/
公式サイト:https://www.lespros.co.jp/artists/sara-minami/
公式YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCDvEytlGb_DYqYoZukE75Lg
【映画情報】
絶賛公開中
映画『禍禍女』

お笑い芸人のゆりやんレトリィバァが映画監督に初挑戦した作品。「スキになられたら終わり」という「禍禍女(まがまがおんな)」を題材に、ゆりやん自身のこれまでの恋愛を投影しながら描き出す。
「愛されなくても別に」の南沙良が主演を務め、ある男性に思いを寄せる美大生・上原早苗を演じる。共演には「ベートーヴェン捏造」の前田旺志郎、「PERFECT DAYS」への出演など多方面で活躍するパフォーミングアーティストのアオイヤマダ、「ベイビーわるきゅーれ」シリーズの髙石あかり、お笑い芸人の九条ジョー、数々のドラマや映画に出演する鈴木福、Netflixドラマ「極悪女王」でゆりやんと共演した斎藤工、「幼な子われらに生まれ」などの田中麗奈ら豪華キャストがそろった。
「ミスミソウ」「許された子どもたち」などの監督・脚本で知られる内藤瑛亮が脚本を手がけ、作詞・作曲家で音楽プロデューサーのyonkeyが初めて実写映画の音楽を担当。2025年・第62回台北金馬映画祭で日本人監督初となるNETPAC賞を受賞するなど、海外の映画祭で注目を集めた。
<出演>
南沙良
前田旺志郎、アオイヤマダ、髙石あかり、九条ジョー、鈴木福、前原瑞樹、水島麻理奈、本島純政、平田敦子、平原テツ、斎藤工、田中麗奈
<スタッフ>
監督:ゆりやんレトリィバァ
脚本:内藤瑛亮
配給:K2 Pictures
公式インスタグラム:@mag_mag_pr
公式X:@mag_mag_pr
公式サイト:https://k2pic.com/film/mmo/


