9/25(金)公開の映画『蒲田前奏曲』。今年3月に開催された第15回大阪アジアン映画祭ではクロージング作品として上映され、公開記念舞台挨拶が開催。キネカ大森にて、古川琴音、須藤蓮、中川龍太郎監督、松林うららによる舞台挨拶がありました。
映画『蒲田前奏曲』は、現在注目されている4人の監督が連作した長編映画。蒲田に住む売れない女優・マチ子を中心に、彼女に関わる人々の人間模様を通して、女であること、女優であることを求める社会への皮肉をコミカルに描いた作品。今回の舞台挨拶では、4編のうちの1つ「蒲田哀歌」の監督・中川龍太郎と出演する、古川琴音、須藤蓮、松林うららの4名が登壇しました。
蒲田での実在のお店を使ったドキュメンタリー風な撮影でもあったと思いますが、どのような意図がありましたか?
中川:登場人物がカメラを持ってどうやって世界を切り取るかに興味はありました。そのことを通してその町の歴史だったり、過去の人間が現在をどう見ているのかということ、そのことを通して現在が見えてくるのではないかということを考えて企画を考えさせて頂きました。あと、「味の横綱」など歴史のあるお店や風景を残したい思いでも撮影させて頂きました。
蒲田のロケで印象に残っていることはありますか?
古川:古い商店街もあってノスタルジックで、昔の日本を感じる場所であることがすごく印象に残っています。早朝に誰もいないアーケードを走るシーンもあって、楽しかったです。
須藤:蒲田の印象より古川さんの印象が強すぎて……(笑)。
75年前の蒲田での空襲があったことも絡めて描いた作品かと思いますが、そのお思いとはどのようなものだったのでしょうか。
中川:たった75年前に生きたくても生きられなかった人がたくさんいて、その人たちが今の僕たちや僕たちが作った街を見てどう思うんだろうか、という発想の機転はありました。自分に対する恥ずかしさや至らなさをどう相対的に見るべきかという時に、その視点が必要でした。
古川さんは空襲で亡くなった方の幽霊という難しい役どころでしたが、いかがでしたか?
古川:現代で暮らす人とは少し違った浮いた存在ではあるので、観た方が少し違和感を覚えてもらえるような存在になることを意識しました。
中川:その存在感を出せる人がなかなかいなくて、そこが古川さんのすごいところですね。喋り方とか、浮いていないようでいて浮いている雰囲気を出すのが古川さんだからできたと思います。
須藤:作り込んで演じているわけでもないのに浮いて見える、そこがすごいなと思いましたね。
須藤さんが現代的な若者の役でしたが、演じる上で心がけたことはありますか?
須藤:僕、ふだんもあんな感じなので作り込むことはしなかったですね(笑)。監督には「現代的な若者の空虚な感じで演じてほしい」と言われていました。なので、欠落しているものを何かで埋めようとしている意識は持って演じましたね。
撮影を通しての感想を教えてください。
古川:アドリブに苦しめられました。というのも私が演じたのは戦時中に亡くなった女の子の役だったので、いろいろと情報を収集しないといけなくて。違う時代の女の子であることをより答えをひねり出すことに苦労しました。
中川:この時代に生きていなかった役を古川さんは苦しみながらかもしれませんが丁寧に演じてもらったと思っています。現代的な姉弟がいる中で、古川さんでなければ成立しなかったなと思っています。白黒の映像でしか存在しなかった存在を、カラーにしてくれたんだと思います。
古川さんが歌うシーンもありましたよね。
古川;はい、歌うことが苦手だったので、ずっとカラオケで練習していました(笑)。でも、あの歌はすごくいい歌だと思ったので、他のオーディションで歌う機会があったので勝負曲として歌わせてもらいました(笑)。
最後に、本作をご覧になる方々へコメントをお願いします。
古川:蒲田の街並みにがそのままフィルムで残っている中で、そのファンタジーの物語を楽しいんでもらいたいです。
須藤:冒頭で戦争の映像が流れたり、中川監督の意図が脚本と映像になっている映画だと思います。その辺も汲み取って観てもらえたらと思っています。
中川:4つの作品が連なっている珍しい映画でもあるので、その作品ごとの違いも含めて楽しんでもらえたらと思います。
【蒲田前奏曲】
第1番「蒲田哀歌」 <大過去>
(監督:中川龍太郎 / 出演:古川琴音、須藤蓮、松林うらら)
オーディションと食堂でのアルバイトの往復で疲れ果てている売れない女優、マチ子。ある日、彼氏と間違われるほど仲の良い弟から彼女を紹介されショックを受ける。だが、その彼女の存在が、女として、姉として、女優としての在り方を振り返るきっかけとなる。
第2番「呑川ラプソディ」 <現在>
(監督:穐山茉由 / 出演 : 伊藤沙莉、福田麻由子、川添野愛、和田光沙、松林うらら、葉月あさひ、山本剛史)
アルバイトをしながら女優をしているマチ子。大学時代の友人5人と久々に女子会をするが、独身チームと既婚チームに分かれ、気まずい雰囲気に。そこでマチ子は蒲田温泉へ行くことを提案する。5人は仕事、男性のことなどを話し合い、次第に隠していたものが丸裸になっていく。
第4番「シーカランスどこへ行く」 <未来>
(監督:渡辺紘文(大田原愚豚舎)/ 出演 : 久次璃子、渡辺紘文)
マチ子の実家は大田原にある。大田原に住む親戚の小学5年生のリコは、大田原で映画の撮影現場にいる。そこへとある映画監督が撮影現場の待合所にやってきて…。渡辺紘文監督ならではの視点で東京中心主義、映画業界、日本の社会問題批判を皮肉に表現し描く。
第3番「行き止まりの人々」 <過去とトラウマ>
(監督:安川有果 / 出演 : 瀧内公美、大西信満、松林うらら、吉村界人、二ノ宮隆太郎、近藤芳正)
映画のオーディションを受けたマチ子。セクハラや#metooの実体験やエピソードがあれば話すという内容だったが、皆、思い出すことに抵抗があり、上手く演じられない。そんな中、マチ子の隣にいた黒川だけは迫真の演技を見せる。マチ子は共に最終選考に残ったが…。
2020年製作/117分/日本
配給:和エンタテインメント、MOTION GALLRY STUDIO
<スタッフ>
監督・脚本:中川龍太郎 穐山茉由 安川有果 渡辺紘文
プロデューサー:松林うらら
エグゼクティブプロデューサー:市橋浩治 小野光輔 大高健志 小泉裕幸
コエグゼクティブプロデューサー:伊藤清
コプロデューサー:汐田海平 麻生英輔
アソシエイトプロデューサー:橋本鉄平 富澤豊