
『湯を沸かすほどの熱い愛』以来、10年ぶりに中野量太監督が完全オリジナル脚本で撮り下ろした映画『私はあなたを知らない、』が8⽉28⽇より絶賛公開中。主人公「西山夕平」(坂口健太郎)と母である「東浜紗月」(堀田真由)の娘「朝子」役として抜擢されたのが、俳優・早瀬憩。真正面から役に向き合う姿勢と、芝居への湯を沸かすほどの情熱で、人気監督のハートを射止めた次世代筆頭の演技派俳優。そんな彼女に、作品に関することや芝居への思いなどの話を尋ねてみました。ブレイク前夜の早瀬憩にkukkaも注目していきます!
PHOTO:望月宏樹
TEXT:kukka編集部
公開直前ですが、今はどのような気持ちでしょうか。
早く作品をみなさんに届けたい気持ちがすごく強くて。観てくださった方々の感想を早く聞きたいです。というのも、撮影現場で、一つの作品を作るために集まっている、同じ目標を持ったチームの中でも、観た後に感じることが違っていて、すごく意見が割れていたんです。公開して、みなさんに観てもらえたら、どんな意見があるのだろうかと、より解釈が広がると思うので。その感想を聞けるのが、すごく楽しみです。
では、観た人には積極的にSNSやネットに感想を書いてもらいたいですね。
書いてほしいです、見るので(笑)



「朝子」役に決まった時の心境を聞かせてください。
オーディションは数回あったのですが、回数を重ねるごとに、私は「朝子」を演じたいんだと自覚し、その気持ちが強くなっていきました。だから決まった時には、ホッと安心した気持ちでした。ただ同時にオーディションの時から、監督自ら演出をしてくださり、監督の作品に対する熱意を感じていました。物語の核でもある「朝子」の人生を自分が背負い生き抜くこと、また監督の期待に絶対に応えたい責任感とプレッシャーをとても強く感じました。
オーディションで、回数を重ねるごとに手応えはあったのでしょうか。
手応えはほとんどなくて、それよりも監督と何度か会って、お話を重ねることで、「中野監督の作品に出たい」「一緒にお仕事をしたい」という気持ちが強くなりました。また「朝子」役にもどんどんのめり込んでいき「彼女を演じたい」、その両方の気持ちがありました。
演じたい気持ちが増した理由について、詳しく教えてください。
「朝子」に共感したり、感情移入をすることが多くなりました。難しいシーンではあるのですが、実際に演じていると、心のどこかで「朝子」を演じる楽しさを覚えていました。監督から「次はこうしてみて」という要求に、「朝子」として応えようとする時間も、すごく有意義なものでした。自分が「朝子」を演じ、この監督のもとでお芝居をしたい気持ちが増していったと思います。
回を重ねることで「朝子」への解像度が高くなったんですね。
オーディションでは抜粋された台本でお芝居をしていたので、得られる情報は少ししかなくて。でもその中で自分なりに「朝子」の心情や置かれた状況を考え、監督とも話を重ねていくうちに役への解像度が上がり、同時に「朝子」への思いも強くなりました。
監督の作品に対する想いを感じ、またそれを必死に実現させようとしたんですね。
「次はこうしてみて」を何回か繰り返して、その度に監督の期待に応えたい一心でお芝居をさせてもらいました。ある取材の場で、オーディション時に私の様子について聞かれた監督が、「すごく食らいつこうとするし、一生懸命にやってくれていた」と話されていたんです。それを聞いて、あの時の私の気持ちが監督にも通じていたんだと思い、すごく嬉しかったです(笑)

合格の知らせはどのようにして早瀬さんの耳に届いたのでしょうか。
電話でマネージャーさんから教えてもらいました。作品への気持ちが強かった分、最後のオーディションが終わってからも毎日「朝子」のことが忘れられませんでした。だから合格の話を聞いた時は、すごく嬉しくて、嬉し涙を流してしまいました。
撮影に入るまでの役づくりでは、どのようなことをされましたか。
台本を読み込んで、分からないことがあれば監督に相談することを繰り返していました。
また祖母役の原田美枝子さんに「朝子」として手紙を書くことも試してみました。
あとは「夕平」の裁判資料を自分なりに調べてまとめてみたり、「朝子」ならこうしただろうと思う行動をして、「朝子」の感情を味わい、徐々に「朝子」と自分を近づけていく、ある意味で一心同体になる作業をしました。
また、撮影が始まってからの話ですが、幼少期の「朝子(倉田瑛茉)」の撮影現場にも足を運びました。
監督からのアドバイスもあったのでしょうか。
原田さんへの手紙は監督から「手紙を書いて渡してみたら」と言っていただきました。実際に書いてみると、「朝子」は13年間このおばあちゃんに育ててもらったんだという気持ちにもなれ、おばあちゃんとの関係性がより掴めたので、とてもありがたかったです。
「朝子」の子ども時代の現場にも足を運ばれたそうですが、実際に目にして得たものは何かありましたか。
自分の人生の話なので、記憶は無くなってしまっていても、一直線に繋がっているシーンです。自分の人生として、一度見ておきたい気持ちで現場に行きました。本当に見ておいて良かったなと思いました。
大人になって子どもの頃の記憶がない「朝子」を演じてみて、苦労したことはありましたか。
苦労はありました。私は台本も読んでしまっているし、幼少期の幸せだった家族の姿も見てしまっているし、「夕平」がやってしまったこと、またその葛藤もすべて知っているんです。「夕平」と初めて会うとなった面会室のシーンで、すべてを知っている感情で演技をしてしまい、監督に軌道修正をしていただきながら演じました。その後も、感情が表に出てしまうことがあったので、心の中で「私は「夕平」を知らない!」と思いながら演じていました(笑)
5歳の「朝子」を演じた倉田瑛茉さんを見た時の感想を教えてください。
撮影見学に行った時、「夕平」と「紗月」と「朝子」がすごく幸せそうで、18歳の「朝子」が見たらとても喜ぶだろうなと思いました。その光景はずっと見ていられるほど、幸せそうなものでした。大人になった「朝子」が、子どもの「朝子」を見たら、誇らしいと感じるはずだと思います。こんな素敵なお母さんがいて、こんな時間を過ごせていたんだと。
現場に行ったことで、何か幼少期の「朝子」のクセなどは盗めましたか。
私自身が、これまで誰かの幼少期を演じたり、自分の幼少期を誰かに演じてもらう経験はなかったんです。それもあって何かヒントになることがあればと思い、幼少期の「朝子」の撮影現場に行ってみたのですが、本当に行ってよかったと思っています。もちろん、動きだったり、クセも盗めたらとは思いましたが、それ以上にその幸せな光景を見られたことが、記憶にはないことではありますが、「朝子」を演じる上で大きな財産になったと思います。


坂口健太郎さんとの共演についても教えてください。
坂口さんとご一緒したのは、面会室のシーンだけなんです。台本を初めて読んだ時に、想像できることの限界があり、実際に演じてみないと分からない部分が多いまま、いざ撮影に臨みました。ただ「夕平」が面会室に入ってきたその瞬間に、自分の中で「朝子」になれたと自覚しました。「朝子」が「夕平」に13年ぶりに会いに来た気持ちは、こんな感じだったのかな、と。すごく緊張して、心臓がバクバク言って。「夕平」は今こんな顔をしているんだとか、そういう気持ちになれました。面会のシーンは5回あったのですが、重ねていく中で、「夕平」の言葉や表情から、家族のように「愛していてくれたんだ」とか「今も愛してくれているんだ」という感情がひしひしと伝わってきました。思わず泣きそうになったり、そういった思いもよらない感情になれたことは、坂口さんに引き出してもらったものなので、すごく感謝しています。面会を重ねることで、「朝子」としてその場にいることができ、きちんと「夕平」と向き合うことができたと思います。
中野監督とのやり取りで印象に残っていることがあれば教えてください。
監督から言われてハッとしたのは「人は思っていることと、反対の行動をする」という人間の感情に関する話です。例えば、悲しかったら繕って笑ったりするし、怒っていたら平然と装おうとする。そのままの感情を見せないと教えてもらいました。悲しくて悲しんでいるよりも、悲しさを堪えている方が響くものがあると思うんです。(祖母が亡くなり家に帰ってきて)牛乳を飲むシーンで私がすごく苦戦していた時に教えていただき、すごく腑に落ちたことを覚えています。
一番難しかったのは、どのシーンだったでしょうか。
やはり面会室のシーンです。「朝子」が希望を持ってしまう様子、ラストに向かって「夕平」への気持ちの変化を見せたかったです。あとは「朝子」の純粋さ、真っ直ぐさです。無意識ではあるのですが、事件の真相を調べたり、「夕平」に何度も会いに行ったり、すごく熱中し、のめり込んでいく様子です。滝藤さん演じる町村弁護士や周りの大人から見て、純粋さゆえの危なっかしさが少しでも伝わったら良いのかなと考えていました。
今作で成長できたと感じているところを教えてください。
撮影全部を通して、チャレンジの日々で、すごく成長させてもらえたと思います。監督から受けた演出もそうですし、大前提として、この作品に出会えたこと、「朝子」を生きられたこともすべてです。撮影をしていた1か月の日々は、すべてが濃くて、全部自分の糧になったと思います。本当に貴重な時間を過ごすことができました。
この物語の続き、どのような続きがあったと思われますか。※ネタバレを含む
「私はあなたを知らない、」と物語では2回出てくる言葉ですが、それぞれ違った意味で、投げかけられています。
「朝子」が言った「私はあなたを知らない、」には、「朝子」なりの「夕平」への赦しと愛情が込められていると思っています。「、」は「朝子」は希望や未来といった前向きなものを想像して付けたものだと思います。二人がどうなったかは分からないけれど、「朝子」を演じた身としては、二人の将来はきっと良いものになるだろうと思うし、良いものであってほしいと信じたい気持ちがあります。



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作品に登場するサボテンを見ていると、なんだか育ててみたくなります。
早瀬さんもその後、サボテンを育てたりはしませんか。
育てています!(笑)
本当ですか(笑)
撮影現場にたくさんあったサボテンから1つをいただいて育てています(笑)。毎日観察しています。
そうなんですね(笑)。作品では花が咲くまでに20年ほどかかるものでした。早瀬さんのサボテンは何年後かに花を咲かせるものですか。
分からないんです。
品種は分かっているのでしょうか。
作品でも使われていたキンシャチです。小さな目のサイズなので、数年で花が咲くのかなと想像しています(笑)
先々になるかもしれないですけど、花を咲かせるのが楽しみですね。
咲いたら報告します(笑)
10数年後(!?)、楽しみに待っています(笑)


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祖母からの躾を破って牛乳パックのまま口をつけて飲み干すシーンが出てきます。
早瀬さんが躾としてよく言われていたことで、思い出すことはどんなことですか。
よく言われていたのは「嘘はつかない」ということです。あと、仕事面では、周りの支えてくれる人に感謝しなさい、とはずっと言われていました。
話題作品に引っ張りだこですが、今現在、俳優の仕事の楽しさを実感されていますか。
お芝居をすることが好きで、高校を卒業して環境が変わり、よりお芝居に集中できる環境になりました。1分1秒でも長く芝居を続けていたいですし、長く現場にいられることがすごく嬉しいです。
これからどんな作品に挑戦してみたい気持ちですか。
今年4月期のドラマ「サバ缶、宇宙へ行く」に出演して感じたのですが、映画の現場とはまた違い驚くことが多かったんです。あまりドラマに出演させていただく機会がなかったのですが、もっとドラマにも出演してみたい気持ちにもなりました。
俳優として自身の強みは何だと思われていますか。
今回の作品でいえば、中野監督自身がオーディションから演出をつけてくださったので、それに応えたい一心でした。負けず嫌いなところがあるので(笑)。撮影中も腑に落ちないところがある時は、腑に落ちるまで考えたり、理解するまでやり続けるところが強みと言えるものなのかもしれません。「今回のオーディションは絶対に受かりたい!」と思いながら受けていたので、そういう熱意が伝わっていたなら嬉しいです(笑)
最後に早瀬さんから、映画を観る方々へメッセージをお願いします。
作品を観ていただけたら『私はあなたを知らない、』の意味が分かると思うので、ぜひ劇場に観にきていただきたいです。人によって受け取り方が違う作品だと思うので、ぜひ映画を観て、何を受け取ったのか、何を感じたのか、みなさんの声を聞かせてほしいです。

【プロフィール】
早瀬憩 Hayase Ikoi

2007年6月6日生まれ。千葉県出身。身長:160cm。趣味:読書、カメラ、ベース、映画鑑賞。特技:水泳。レプロエンターテインメント所属。
2019年から芸能活動を開始し、2021年に女優デビュー。その後、ドラマ「ブラッシュアップライフ」(23)、NHK連続テレビ小説「虎に翼」(24)など話題作に出演。2024年に初主演を務めた映画『違国日記』と『あのコはだぁれ?』での演技が評価され、第16回TAMA映画賞最優秀新進女優賞と第67回ブルーリボン賞新人賞を受賞。近年の主な出演作に映画『か「」く「」し「」ご「」と「』(25)、『この夏の星を見る』(25)など。2026年には、4月期ドラマ「サバ缶、宇宙へ行く」、映画『モブ子の恋』(6/25公開)のほか、映画『私はあなたを知らない、』(8/28公開)、映画『見上げてごらん』(10/30公開)、映画『呪いのスマホ』(11/13公開)など多数の待機作品を控える注目の俳優。
公式Instagram:@ikoi_hayase_official
公式X:@ikoi_hayase
【映画情報】
絶賛公開中
映画『私はあなたを知らない、』

⻄⼭⼣平(28)は天涯孤独の⾝。粛々と働き、⾃分の中で決められたルーティンで⽣活をし、たった⼀⼈のその環境を寂しいとも感じずに⽣きてきた。職場にやってきた新しいパート職員・紗⽉と出会うまでは。彼⼥と出会い、⽣きる喜びを得て⼣平の毎⽇は輝いていった。そしてある⽇、紗⽉から⾃分の5歳の娘・朝⼦を紹介される。彼⼥は実はシングルマザーだった。紗⽉と朝⼦との⽣活が、これまで知らなかった“家族”という幸せの形を知り、⼣平の⼼を開放していくが・・・。
<出演>
坂⼝健太郎
早瀬憩 堀⽥真由 倉⽥瑛茉
稲垣来泉 和⽥光沙 ⽚⼭友希 畦⽥ひとみ ⽥牧そら
渡辺真起⼦ ⾜⽴智充 ⿊⽥⼤輔
滝藤賢⼀ / 原⽥美枝⼦
<スタッフ>
原案・脚本・監督:中野量太
⾳楽:世武裕⼦
製作総指揮:藤本款 プロデューサー:深瀬和美 若林雄介 撮影:岩永洋 照明:⾕本幸治 録⾳:猪股正幸 美術:⿊川通利
装飾:松尾⽂⼦ ⾐裳:⻄留由起⼦ ヘアメイク:板垣実和、廣瀬瑠美 編集:瀧⽥隆⼀ ⾳響効果:勝亦さくら 監督補:塩崎遵
制作担当:⻑島紗知 キャスティングディレクター:杉野 剛 ラインプロデューサー︓天野佑亮
製作:「私はあなたを知らない、」製作委員会 共同製作︓Pyramide Productions
制作プロダクション:パイプライン 製作幹事・配給:クロックワークス
助成:⽂化庁⽂化芸術振興費補助⾦(⽇本映画製作⽀援事業)|独⽴⾏政法⼈⽇本芸術⽂化振興会
©IDKYPs./Pyramide Productions 2026年/⽇本・フランス/カラー/シネマスコープ/5.1ch/126分 映倫区分G
公式サイト:https://watashiramovie.com/
公式X:@watashiramovie
