リリー・フランキー(以降「リリー」):仕上がりを観ると舞台のような感じはあるよね。

斎藤工(以降「斎藤」):シットコムのような感じはありますね。

リリー:そう見えているのは嬉しいですね。舞台ぽく見えているのは、人と人が重なっていることも影響している気がします。実はあのペンション、撮影すると意外に狭いんです。

斎藤:撮り口もかなり工夫しながら撮っているんです。

リリー:リビングに大勢が集まって、グシャっとなっている時が好きなんです。あれはいわゆる普通のドラマ撮影ではやらないことだと思うんです。ひとつの部屋にどんどん人が集まってしまうと、普通は一人ひとりの顔をカメラが抜くことが多いんです。それをあえてやらずにグシャっとしたまま撮っているんです。

斎藤:そうですよね、小劇場のような感じがあるかもしれないですね、この作品は。

リリー:移動が少ない分、セリフが多いドラマでもあるんです。結構な量のセリフを覚えなければならないんです。このドラマでは、監督が1回しか撮らないんです。意外に1回しか撮らないと思うと人って噛まないものなんですよ。でも噛んでも監督のOKはできると思いますけどね(笑)。だから滑舌が悪いところも、またこの作品が自然な印象を与えてくれる理由だと思うんです。

リリー:スタッフも優秀なので、どんなに滑舌が悪くても、あとで音声さんにオンリー(※)ください、と、言われたことがないんです(笑)
※オンリー=セリフや効果音など音のみを録音すること

斎藤:ないですね(笑)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

リリー:あの現場にいるといつもの「ハル」でしたね。逆にこちらが1年もの間、朝ドラの現場にいたんだと思ってしまうところですが、本人はいたって普段と変わらないです。

斎藤:どんな状況でもいろいろなことを成立させてくれる彼女ですし、それがさらにカッコ良くて、さらに頼もしくなった感じです。

リリー:彼女がいないと成立しないですね。

リリー:本当の娘のように思っていますし、幸せになって欲しいですね。お相手の方に「不束な娘ではありますが、末永くよろしくお願いします」とお伝えしたいです(笑)

斎藤:本当のお父さんですね(笑)

リリー:自分の中で差し入れの決まり事があって、「生ものが良い」「袋に入っていないものが良い」などがあるんです。夏には冷たいもの、冬なら温かいもの。だから、これから寒い季節の撮影には、あの「肉まん機」を毎回持ち込むことになるでしょうね。

斎藤:「肉まん機」の周りは暖かいので、女の子のスタッフはそこで暖を取れるんです。だから、自然と「肉まん機」の周りには人が多く集まっているんです。

リリー:ストーブ代わりにもなるんです(笑)

斎藤:そういう効果も「肉まん機」にはあるんですよね。

斎藤:近隣の温泉施設をあらかじめ調べているんです。雨で濡れた彼女たちを撮影後に、そこへ届けることが「カッパヨガ」なんです。そこは声を大にして言いたいですね(笑)

リリー:ヨガをだけではなく、スパに行くまでが「カッパヨガ」なんです。

斎藤:リリーさんが「カッパヨガ」を見た瞬間に、“生春巻き感あるな”と言ったんです。それからは、もう雨の中で「カッパヨガ」の姿が、“生春巻き”にしか見えなくなってきて(笑)

リリー:「生春巻きみたいだな」と言ったら、タクミくんが隣でボソっと「あ、だから見たことがあるんだ」と言ったんです。その返しがすごいよね(笑)

斎藤:その言葉にピンと来たんです(笑)

リリー: 5年も続けていることもあり、娘が成長していく中で、お父さんが恋をするよりも、娘が恋をする「家族の物語」になっていることですね。そこが自然に入れ替わっている感じがして、長くやっていることの面白さだなと感じています。お父さんも相変わらず、恋はしていますけどね(笑)

斎藤:ペンションの前で毎回、記念撮影をするのですが、如実に自分が歳を重ねたことが分かるんです(笑)。仮にこのドラマが「season3」で終わってしまっても、この記念撮影だけは2年に一度、撮りにあのペンションに行きたいですね(笑)。老いを2人と共有しながら生きていきたいなと思います。

リリー:タクミくんがそう言うから、「season1」の写真を見たんです。沙莉さんはあまり変わっていないけど、僕らは老けたよね(笑)

斎藤:(笑)。毎回、午前中に撮るから仕上がっていないですよ(笑)

リリー:もともと深夜放送から始まった番組じゃないですか。なのに、そういう人たちにオファーするから僕らが分別のない人に思われるんです(笑)

斎藤:逆にそれが功を奏して、みなさん出演してくださるとも言えますしね(笑)

リリー:みなさん虚をつかれたような気持ちになるんだと思うんです。受けてくださる方がいるものだから、監督やプロデューサーが勘違いをしていると思うんです(笑)。最初に細野晴臣さんが出演されるとなった時から、その傾向はあるんです。

斎藤:「season1」でインドの方が出演されたように、外国の方に、日本のペンションの良さを知って欲しい気持ちがあります。だから、外国の方に出演してもらいたいですね。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

リリー:これまでこのドラマを見たことがなかった方でも「season3」から見はじめても、まったくハードルが高くなく、十分に楽しめる作品です。「season3」とかを気にせず、「北の国から」みたいに「ペンション・恋は桃色 2025春』な気分で見てもらっても良いですしね。「season3」になってある程度、作品としても完成度が高まったから、これを機に興味をもってもらって「season1」「season2」も見てもらいたいですね。この家族の歴史を見てもらうような感覚でも良いかもしれません。どのシーズンでもシロウとヨシオは “もっちゃり”している感じです(笑)
ドラマの質問も良いですけど、いつも女優さんに質問するような質問を僕らにしてもらえますか(笑)

リリー:この何年かそうなんですけど、「英語」ですね。

斎藤:あー、分かります。

リリー:なかなか年齢的に、どれだけ勉強しても覚えたことが、穴の空いたバケツに水を入れるように出ていってしまうんです。だから、これはもう無理なんじゃないかなと思うようにもなってきたんです。

リリー:自分の本がいろいろな国で翻訳される時に、翻訳家の方が翻訳をしてくれるじゃないですか。当時は、自分に語学が必要という感覚がなかったんです。作家として、海外に行っても、その国の人はすでに読んでくれているので、あまり不自由なことはなかったんです。でも、こうして人に会う仕事をすると、海外のスタッフとコミュニケーションが取れないことストレスになるんです。

斎藤:確かにそれはあるかもしれないですね。

リリー:役として英語のセリフを覚えることはできても、スタッフとのコミュニケーションは困りますよね。若い頃、自分がお芝居をするとは思っていなかったんです。30年前は、まだ石井輝男監督の『盲獣vs一寸法師』に出演したくらいだったので(笑)

斎藤:あの伝説の映画ですよね(笑)。僕は海外の映画祭で、「監督ひとりだったら呼ぶ予算があります」と言われることがよくあるんです。日本のタレントさんのイメージがどうしても通訳、衣装、ヘアメイクといったスタッフを連れて行くとなっていて、呼ぶのは難しいだろうと思われている映画祭が結構あるんです。そういった意味でも、Q&Aくらいできる英語力さえあれば、もっといろいろな景色を見られると思うんです。それを毎年のように思うんですが、僕もバケツに穴が空いていて、覚えたことが貯まっていかないんです(笑)

リリー:もうそこは諦めたくなるよね。でも、何でも学習をしようという気持ちがなくなると精神的に老けていくじゃないですか。だから、映画『デッドプール&ウルヴァリン』を観る時間が惜しくなってくるだよね。

斎藤:それを先日のラジオでもリリーさんが話をしていたんですよね(笑)

リリー:60歳を過ぎるとデッドプール&ウルヴァリン』を観る時間が惜しくなるんだよね。

斎藤:(笑)

リリー:でも観ちゃうよね(笑)。あと昨年末から、ピアニカをはじめました。先ほど、タクミくん楽屋へ聴かせに行ってきました。

斎藤:そうなんです。リリーさんがハマって観ていた韓国ドラマ「恋のスケッチ〜応答せよ1988」の曲を。

リリー:それしか弾かないんですけどね。

斎藤:すっごく素敵でした。

リリー:ふたりが好きなドラマの主題歌をピアニカで練習して、それをタクミくんに聴かせるというだけの。タクミくんに聴かせるために練習したね。

斎藤:みんな「恋はスケッチ」を観てないですか? ぜったいに観た方が良いですよ(笑)


【ドラマ情報】

配信中

FODドラマ「ペンション・恋は桃色season3」

<出演>
リリー・フランキー/斎藤工/伊藤沙莉/山口智子
稲垣吾郎/MEGUMIMEGUMI/鈴木慶一
JOY/岩崎う大(かもめんたる)/眉村ちあき/大水洋介(ラバーガール) 他

<スタッフ>
監督/脚本:清水康彦
主題歌:細野晴臣「恋は桃色(New ver. ver.)」(ビクター/スピードスター)
音楽:細野晴臣/香田悠真

▼公式 X


【プロフィール】

リリー・フランキー Lily Franky

斎藤工 Saito Takumi

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