
30代女性の葛藤と、失いかけた思い出との再会を描く映画『ひとりたび』が、6月27日(土)に全国公開されます。本作で主人公「大野美咲」の初恋相手、「荻野圭一」を演じる岩田奏さんにインタビュー。「大人になっていく時間」の過程で揺れ動く中学生の淡い恋心を、瑞々しく繊細に表現しています。今回の取材では、役作りへの向き合い方はもちろん、俳優の仕事に関することから、音楽、文学などプライベートの関心事まで、いろいろと話をさせてもらいました。映画やドラマへの出演が相次ぎ、注目を集める17歳の素顔に迫ります。
俳優の仕事をするきっかけを教えてください。
6歳くらいからドラムを叩いていました。母が「ドラム演奏のためにも、人前に立つ経験をしておいた方がいい」と考えてくれて、仕事とは関係なく、小学2〜3年生の頃にワークショップのようなものへ数回参加させてもらいました。それが初めてのお芝居でした。今の事務所に入ったのは小学6年生の時で、原宿で声をかけていただいたのがきっかけです。
6歳でドラムをはじめられたきっかけも教えていただけますか。
母は音大出身で、クラリネットとピアノをやっていました。父もギターを弾いていて、音楽が身近な環境で育ったんです。両親は、ドラムのようにリズムが大切な楽器をやっておけば、将来ほかの楽器をやりたくなった時にも生かせるだろうと考えたみたいで、ドラムを習うことになったと聞いています。実際、今はギターも弾くのですが、ドラムをやっていたおかげですごく演奏しやすいんです。リズムが取りやすいですし、ドラムでは両手両足を使って演奏してきたので、ほかの楽器にもすぐ馴染めます。頭の中で演奏を整理しやすい感覚もあって、ドラムを続けてきて良かったなと実感しています。
音大出身のお母さんが良い選択をしてくれたんですね。
名采配だったと思います(笑)
スカウトされた時に、事務所に入ることにしたのは、そのワークショップでの芝居経験があったからでしょうか。
声を掛けていただいた時に、楽しい思い出があったから、割とすんなり「やってみよう」という気持ちになれたんだと思います。
出演された映画『ひとりたび』について質問をさせてください。
どのような経緯で出演が決まったのでしょうか。
オーディションを経て決まりました。映画『雑魚どもよ、大志を抱け!』に続いて、2つ目の作品への出演です。前作から1年ほどが経っていたので、久しぶりの映画出演だと思い、気持ちを高めて撮影に臨みました。
1作品目の経験を生かして臨めた作品だったんですね。
「もっとこうできたな」とか「ああできたな」と思うこともたくさんあって。だから次はそこを変えよう、もっと良くしようという気持ちが当時はあったと思います。
オーディションでの手応えはあったのでしょうか。
手応えは、結構、常にないです(笑)
オーディションで心掛けていることはありますか。
オーディションは5〜6人で受けることが多いんです。順番が最初だとあまり気にならないのですが、後の方になると、どうしても前の人の演技に引っ張られてしまうことがあって。無意識のうちに、自分が考えてきたものとは違うアプローチを見て、「もしかしたら、そっちが正解なのかな」と思ってしまうこともあるんです。だから、心がけているのは、どちらが正解かを考えすぎないようにすることです(笑)。自分が準備してきたものを信じて、しっかり出し切ることを大切にしています。


完成した作品を観た感想を聞かせてください。
大人パートのシーンは、撮影しているところを一度も見たことがなかったんです。完成した作品を観て、会話の自然なやり取りや、「美咲」さんが「圭一」に思いを寄せていたこと、そして「圭一」の実家へ行くシーンを観て、本当に素敵な作品だなと感じました。 その中で「圭一」の中学時代を演じることができたのはとても嬉しく思えます。
演じられた「圭一」の人物像について、イメージしていたものを教えてください。
僕の中では、「圭一」は「美咲」が大人になって振り返った時に、「本当に好きだった」と思える相手でなければいけないと思っていました。脚本を読んでまず感じたのは、「圭一」がとても優しい少年だということです。会話の雰囲気からも、柔らかくて穏やかな印象を受けました。話し方にも、中学3年生らしい不器用さがあって、まだ女の子に話しかけることに慣れていない感じがあったんです。撮影当時、僕自身も実際に中学3年生だったので、そうした気持ちに共感しながら演じていたことを覚えています。
また、脚本を読んだ時の印象では、シャイな感じがしていましたし、その方が、「美咲」が思い返した時に、より辛い気持ちになるだろうなと思って演じました。
そういったことは監督の石橋さんと何か話をされたのでしょうか。
実は「圭一」のその後、亡くなるまでをどう過ごしたのかについては、監督から説明を受けました。その話を聞いたことで何かを意識して演じたりはしなかったのですが、演じていく中で、それを知っていたから、やり易かった部分もあったのかもしれません。無意識下で変わるところがあったのではと思います。
岩田さんの思う、ぜひこのシーンが見て欲しいポイントを教えてください。
「圭一」と「美咲」がキスについてのやり取りをしたシーンです。ある意味、あんなに意味がよく分からない感じを自然に言えたのは、あの年齢だったからかもしれません。そういった中学生らしさみたいなものは当時だからできたことでもあるので、いま思い返すと良いシーンだったと思います。
描かれていない部分の話になりますが、「圭一」と「美咲」はその会話の後、キスをしたと思いますか。
キスできていないと思います(笑)。その方が「圭一」らしい気もしています。
同じように作品にない話ですが、「大野美咲」は、その後、どのような人生を歩んでいくと想像されますか。
試写で見た時、自分は「圭一」として作品を観ていました。その時に感じたのは、「美咲」には「すごく幸せに暮らしていて欲しい」と思えたことを覚えています。

普段、演じる役の人物背景など、台本に書かれていないことも想像されるのでしょうか。
「こういう人なんだろうな」が先行してしまうのは、よくないと思っています。まず台本を読んで、それができた上で、この役を演じるにあたって何が足りないんだろう、背景のどの部分が足りないんだろう、は考えます。演じる時に「そのシーンの前に何があったか」はよく想像するのですが、「この後、どうなるんだろう」は、あまり考えてはなかったですね。でも、そういうことを考えたりすることは、割と好きな方です。
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先ほど音楽の話がありましたが、現在は何か音楽活動はされているのでしょうか。
仕事に関係なく、学校の友人などとスタジオを借りて演奏することはあります。
将来的に、音楽でも仕事ができたらとは考えていますか。
できたら良いですね。
作品の中でも出てきた「MD」は見たことがあったのでしょうか。
実は家にたくさんMDがあるんです。もちろん父と母のものなんですが、工具箱みたいなケースに入っていました。ただ見たことはあったのですが、再生プレーヤーが無いので、MDの音を聴いたことはなかったです。
作品中に「曲か歌詞のどちらを重視する派か」の会話がありました。岩田さん自身は、どちらに惹かれて聴くことが多いのでしょうか。
聴くときは曲がメインで、逆に演奏する時は 歌詞を考えることが多いです。結構、音楽も演技みたいだなと思っているんです。この歌詞はこういう意味だろう、と想像しながらギターを弾くと音が変わりますし、それはドラムでも音が変わります。だから曲と歌詞、そこはバランスがあると思います。
普段、聴いているのはどのような音楽でしょうか。
父と母の影響が大きいのですが、東京事変を演奏しています。あと吉澤嘉代子さんが好きで、ライブにも先日、行きました。ほかにもback numberも好きでよく聴いています。


高校最後の学年になりますが、やっておきたいことはありますか。
ずっと運動部に入りたいという気持ちがあったんです。中学では吹奏楽部に所属していたので、運動部の人たちを見ていると楽しそうだなと思っていましたし、単純にカッコ良く見えていました(笑)。高校2年生の時にはサッカーの同好会のような部に入ることができたので、その意味ではやり残したことはあまりないですね。
ただ、高校生のうちにたくさん本を読んだり、映画を観たりしたいと思っています。将来振り返った時に、「高校生の頃にこの作品を観て、こんなことを感じたな」と思い出せるような経験をたくさん積んでおきたいです。
完全な休みの日、どんなことをして過ごしていますか。
スポーツ観戦が好きなので、野球やサッカーの試合を観ることが多いです。友だちと会って話をすることもありますが、時間がある時は本を読んでいます。特に太宰治が好きで、これまでに20作品以上読んできました。
太宰治のどんなところが好きなんでしょうか。
思っていた以上に読みやすい作品が多いんです。人間の弱さや脆さといった部分をとても丁寧に描いていて、そこがすごく魅力的だなと感じましたし、そこに惹かれてハマりました。
本について話せる友人はいますか。
本を読む友だちは一人だけいて、その子とは感想を話すこともあります。でも、周りには本をたくさん読む人があまりいないんです。
本について話せる友人がいることは良いですね。
そうですね。
では最後に、映画をご覧になる方々へ、ぜひメッセージをお願いします。
この作品を観て、大人の人たちに昔大切にしていたものや、大事だった気持ちを思い出してもらえたら嬉しいです。そして、それが今でも自分にとって大切なものなんだと、ぜひ認めてあげてほしいと思います。「大事なものは、大人になった今でも大事だ」、――それを感じてもらえたら嬉しいです。

【プロフィール】
岩田奏 Iwata Kanade

岩田奏(いわた・かなで)。2008年11月22日生まれ。東京都出身。身長:170.8cm。趣味:ギター、シャーペン、読書、キャンプ、散歩、手漕ぎボート。特技:ドラム(6歳〜)。スターダストプロモーション所属。 2023年3月公開映画『雑魚どもよ、大志を抱け!』で西野聡役を務め、その瑞々しい演技で注目を集める。以降、『初級演技レッスン』『ひとりたび』『消滅世界』などの映画作品に出演。ドラマ『姪のメイ』『虎に翼』をはじめ、映像作品を中心に活躍の場を広げている。読書や音楽を好み、等身大の感性を生かした演技に定評がある17歳。
公式サイト:https://www.stardust.co.jp/talent/section2/iwatakanade/
【作品情報】
2026年6月27日(土)
K's cinemaほか全国順次公開
映画『ひとりたび』

東京で働く32歳の美咲は、10年間勤めていた会社に居づらくなり退職。将来が見えないまま実家に帰る。地元で開催された同窓会で初恋の相手が2年前に亡くなっていた事を知り、空っぽだった美咲の心が初恋の思い出で埋め尽くされていく…。
<出演>
岡本玲/⻑村航希/坂ノ上茜/岩田 奏/石山愛琉/日高七海/里内伽奈/中山求一郎/⻑友郁真/濱田マリ/原日出子/平田満
監督:石橋夕帆
脚本:上村奈帆
2024年/日本/アメリカンビスタ/5.1ch/カラー/94分/
配給:MomentumLabo.
©Ippo
公式サイト:https://hitoritabi-film.com/
公式Instagram:@hitoritabi_film
公式X:@hitoritabi_film




